節操無き社内恋愛も横行
社内にまん延した過剰なストレスから、風紀も乱れていた。しょせんブラック企業なのだから。どうせ長く勤めることはないのだから。そう割り切って、くんずほぐれつの男女関係が至るところで興じられ、無節操に求めあい、むつみあう社員も少なくなかった。
ところが、とうとう堪忍袋の緒の切れた社員が決起し、労働組合を立ち上げる。勉強会仲間の大学教授に状況を話したら、有力労組の書記長を紹介され、労組の職域支部を結成したのだ。
労組結成に社員の大半は静観したが、困惑したのは労組発起人が所属する部門の執行役員だった。この執行役員は上司にへつらう一方、おとなしい性格の部下にはパワハラ発言を繰り返す人物で、発起人にも辛く当たっていた。
だが、労組結成以降はピタリと止み、発起人が社内ですれ違ったときに普段どおりに会釈をすると、視線を避けつづけたという。元幹部社員は「彼に労組がついたことで、力関係が逆転したと思ったのでしょう。ビビッていた様子でした」と話す。