江副浩正氏、彷徨うリクルート株と消えぬ不動産への夢

 先日、亡くなったリクルート創業者で元会長の江副浩正氏(享年76歳)。起業家として新たな時代を切り開いたが、「暗」の部分であるリクルート事件は主役亡きあとも歴史に、また人々の記憶に残る。あまり表に出ることのなかったが、芸術家のパトロンとして過ごした晩年、アンダーマーケットで放浪するリクルート株、不動産ビジネスへの野望などが浮かび上がってくる。

リクルートの近所に引っ越し

 世はバブルまっただ中にあった1986年、未公開のリクルートコスモス株が広く政界、官界にバラまかれ、当時の多くの有力政治家が受け取っていたことが判明した。史上最大級の疑獄事件ともなり、2003年、江副浩正氏は贈賄の罪で、懲役3年執行猶予5年の有罪判決を受けた。14年に渡る刑事裁判となった。

 リクルート株はダイエーに譲渡し400億円を得て、その資金を訴訟費用、さらには晩年の芸術のパトロン活動に充てていたという。判決後は「江副育英会」「ラヴォーチェ」で、自身が趣味であった若手芸術家の活動を支援してきた。

 実は江副育英会の所在地は、リクルート本社と約1キロほどの距離にあるが、2005年に自宅を東京・南麻布の高級住宅地から、リクルート本社に近い東新橋の高層タワーマンションに移している。

 こうした点でも、リクルートとの縁、あるいは因縁というものは切ることはできないようにさえ見える。その江副育英会が保有していたリクルート株で、現在でもアンダーマーケットで放浪しているものもあるようだ。

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