ごぼうで夢を実現させた男

 中国・江蘇省の西北端に位置する沛県は肥沃な土壌に恵まれ、ごぼうの生育には最適な場所だといわれる。ここで農業を営む王理想(Wang lixiang)さんは、ごぼう茶で財を成した。都市と農村の格差が広がる中、貧しいとされた農村でも、小さなサクセスストーリーが生まれている。

90年代にブームの芽は出ていた


 王理想さんは、農家に生まれ、幼いころから生活は苦しかった。中学を卒業したあとの唯一の選択は、農村から逃れ、都会で働くことだった。いくら畑を耕しても決して豊かになれない父親を見ていたからだという。こうして、多くの農民と同様に、王さんは都会に出て出稼ぎ工となった。そこでお金を稼ぎ、家を買い、結婚して家庭を築くのが夢だった。

 王さんは電気溶接の技術を身に付け、苦しいながらも収入は徐々に上がっていったが、いつも地に足の着いていない感覚だったという。値上がりを続ける不動産の価格も、不安に追い討ちをかけた。そんな時、同郷の人がごぼう茶を生産し、成功しているという話を聞き、自分にもできるはずだと、故郷に戻る決心をした。

 実は90年代ごろから、日本の輸入会社や種苗会社などが、中国でのごぼう生産に力を入れ始めた。王さんの故郷・沛県でも、ごぼうの生産が始められ、今では中国産ごぼうの一大生産地となっている。王さんの父親もその頃、ごぼうを生産した経験があったのだ。

 といっても中国でごぼうを食す習慣は少なく、主に日本や韓国の輸出向け。売れ行きは伸び悩み、農家の収入は依然として少なかった。そんな中、ある人がごぼうのお茶への利用を学び、成功したという知らせが入ったのだった。

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