リーマンショックの影響も
退去したデザイナーは、このマンションを相当気に入っていたというらしく、この先、長期間にわたっての居住もあり得たという。ただし、事故が起きたために、夫人と長男の精神的なショックが大きいとして、契約期間の途中でやむなく退去したそうだ。
デザイナーと管理会社とは6年以上におよび定期借家契約(途中で2度更新)を行っており、「事故以外に契約を終了する原因が考えられない」と主張していた。
新しい契約は23年6月に契約は終了しているが、新しく契約を更新すればその期間は同23年7月から25年9月までとなっていた。
最近でこそ景気改善の兆しもあるが、実はリーマンショックの影響が大きく、該当物件でも空室が相次ぐなど、不動産オーナーにとっては厳しい時勢でもあったのだ。
本人尋問の中で、管理会社側の証言によると、物件は外資系証券マンら外国人を顧客として見込むものであり、金融不況の後でもあり、賃料を月額175万円のところを、2割以上減額しても埋まらなかったという。まさに、上顧客を突然のアクシデントにより失ったことが響いた。
この裁判の背景には、そうした切実な事情もあった。不動産オーナーにとって、大きな教訓になる事件ではないだろうか。