破綻するブラック企業の楽しみ方(7)

第7回 100人の希望退職を「卒業」と呼んだ社長の非常識

 業績が悪化すると安易に人員削減が行なわれる時代になった。全社員の給与を引き下げてでも雇用の確保を優先しようとする経営は、一部の中小企業にしか見られない。どんな美辞麗句を並べたところで、多くの企業にとって社員は“人財”でなく、あくまでパーツとしての“人材”なのだ。それが“企業は人なり”の現実である。(経済ジャーナリスト・浅川徳臣)

定例会を中止しての緊急朝礼


 「人員削減をしない再建策など甘すぎます」。メインバンクの担当支店長からそう突きつけられたマーケティングコンサルティング会社は、追加融資の条件である希望退職の募集に踏み切った。リーマンショックで受注が激減して、回復の目途を立てられず、キャッシュフローが悪化の一途をたどっていたのだ。

 リーマンショックの翌2008年7月の第一月曜日。この日は、同社の下半期経営計画発表会だった。各部署とも上半期の目標達成状況と要因を分析し、下半期の目標とアクションプランを策定して、前週の金曜日までに事務局に提出済みだった。

 ところが、朝6時に配信された全社メールで、発表会を中止して緊急朝礼が行なわれると通知された。理由は何だろうか。もしかして希望退職募集が発表されるのではないか。そう、ささやきあう社員が少なからずいたが、そのとおりとなった。

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