破綻するブラック企業の楽しみ方(7)

2週間で身の振り先を

 「われわれも皆さんも一生懸命やってきました。しかし、この世において正邪の区別は簡単でありません。正しいことを一生懸命やっていても、自分の能力を超えると間違ったことになる場合があります。こういう現実を学ぶことも大切です。どんな悪い状況でも人生は心の持ち方ひとつです。主体的に生きれば、人生の経験は何でもプラスにとらえられるようになります。この機会に何を得るかと思って生きていかれることが大切だと思います」


 希望退職の締め切りは2週間後と発表された。条件は規定の退職金に、割増分が勤続年数や役職に関係なく基本給の一律2カ月。大手企業のように割増分が1年分も2年分も支払われる資金力は、この会社にはなかった。

 突然の希望退職募集の発表だっだが、社員には大きな動揺はなかった。4月には賃下げがあり、新聞には希望退職募集企業の記事が散見されたので、ついに、うちの会社も・・・そんな心境が大方を占めていた。

 朝礼を終え、職場に戻った社員はあえて希望退職の話題を避け、淡々と業務についた。だが、互いに顔を見合わせて困惑の表情を浮かべあう社員、気分を変えようと用がないのに外出する社員。社内は散漫な空気におおわれた。

 それぞれが身の振り方を問われることになったのだ。それも2週間で。この不況期にすぐに仕事が見つかるとは思えないし、一方で会社に居続けても展望は見えてこない。とても業務に集中できる状態ではなかったが、さらに追い討ちがかかった。(次号に続く)◆バックナンバー(1)(2)(3)(4)(5)(6)

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