仰天の社長発言「希望退職=会社への貢献」
「経営計画発表会を中止して、急きょ朝礼に切り替えたのは、会社の現状をふまえて戦略を大幅に見直す意思決定をしたためです」。社長はそう切り出して、業績悪化の経緯と要因を挙げ、希望退職の募集に踏み切らざるをえない現状を説明した。
募集人数は100人で、全社員の約2割。ここで問われるのは、社長が説明にどれだけ心を尽くし、みずからの責任にどう言及するのかである。発言内容から人間性や人格が包み隠さず現われてしまう。
社長は「一人ひとりが本当に努力してくれているにもかかわらず、経営の舵取りを誤ったことによって、人員削減をせざるをえない事態を招いてしまいました。たいへん申し訳ありません」と全社員に頭を下げた。ここまでは型どおりの発言だった。これで終えればよかったのだ。
だが、次の発言に多くの社員は違和感を覚え、怒り心頭に発した社員もいた。「皆さんはそれぞれのタイミングでわが社からの卒業を予定していると思います。『そろそろ卒業を』と考えているメンバーは、希望退職をすることが会社への貢献になると考えていただきたい」。
なんと身勝手で都合のよい理屈だろう。それに、なぜリストラが「卒業」なのか。経営観の問題ではなく、これはもう人の道を心得ているかどうかの問題だ。「少数ですが、この発言で希望退職を決めた社員もいました」(元幹部社員)。社長は取締役全員の減給も発表されたが、これも禍根を生んだ。部下を退職させて自分は居残るのなら、被雇用者ではないのだから無給で働くべきだろう。のちに、そんな意見が各部署で交わされたのだった。
しかし、社員の鬱憤は、社長に続いて登壇した創業者である会長の発言で、どうにか噴火するのを防げた。会長は切々とした口調で心情を述べた。