6月25日、経営再建中のシャープで、奥田隆司社長(59)が代表権のない会長となり、後任に高橋興三副社長(58)が昇格する。片山幹雄会長(55)は、技術顧問となり取締役を退任。奥田―片山体制はわずか1年3カ月で瓦解し、2人が刺し違えたとも言われる今回の人事。銀行から2人の役員も迎え、生き残りをかけた最後のチャレンジが始まる。
情報はダダ漏れだった
在阪経済記者はこう話す。奥田社長の退任、高橋副社長の社長昇格も、5月14日の発表前に新聞各紙に出た。
「情報の裏を取りを銀行関係者に当たったら、『誰がトップかわからない(シャープの)状況を、早く解決しなければいけない』と、社長交代は当然のことのように話していた」という。シャープの経営体制がいかに悪化していたかがわかる。
奥田社長は昨年4月に取締役常務執行役員から昇格したばかりだった。経営悪化の責任をとった片山氏は代表権をもたない会長になったが、米クアルコム、韓国サムスンとの資本提携交渉をまとめるなど、精力的に経営にかかわっていた。
そのことを評価する銀行筋もあったが、社内からは「あれで責任を取ったことになるのか」(シャープ50代社員)と批判された。片山会長が海外企業と交渉する出張には、高橋副社長の姿があった。代表権、執行権をもたない片山会長だけでは、交渉が進まないためだ。