破綻するブラック企業の楽しみ方(9)

第9回 リストラで信用が失墜して、顧客離れが加速

 前号で取りあげたマーケティングコンサルタント会社の社内は、希望退職者が最終出社した翌日、もぬけの殻のような雰囲気になった。空席だらけで、残った社員も気が抜けて仕事に身が入らなかった。(経済ジャーナリスト・浅川徳臣)

ブラック度が増すのか?

 希望退職募集から締め切りまで間がなかったので、次の仕事を探す時間などなく、とりあえず残ったが、残ったところで何か展望をもてるわけではない。プラス材料は、会社が存続する限り毎月の給料が保障されるぐらいだ。


 「残った我々で会社をV字回復させましょう!」と気勢を上げるメールも飛び交ったが、空元気にすぎないことは明白で、反応して返信する者はほとんどいなかった。皆淡々とルーティンワークをこなすだけだったが、問題は、ひとり当たりの業務量が激増したことだった。

 社員が減ったからといって、業務の絶対量が減るわけではない。これまでよりも少ない社員数で、これまで以上の業績を上げなければならないのだから、業務量は増えて当然である。だが、この会社は、長時間労働を美徳にすら考える札付きのブラック企業だ。ますますブラック度が高まっていくのではないか。そんな不安も社員の脳裏をかすめたのだった。

 「ともかく目の前の仕事を片っ端からこなさなければいけない。会社はどうなっちゃうんだろう・・・・と考える余裕はなかったですね。ただ、将来が見えないなかでの忙しさでしたから、気が滅入って仕方がなかった」(元システム開発部門の中堅社員)

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