破綻するブラック企業の楽しみ方(10)

第10回 幹部の退職が続き、残った社員の関心はXデーに集中

 経営悪化によって100人以上の社員が希望退職をした人材紹介会社では、信用の失墜によって顧客離れが進んで、ますます業績が悪化した。業績回復策として打ち出した組織活性化コンサルティングも、なかなか制約に至らない。多くの提案先からは「100人規模のリストラを行なったのだから、他社を活性化する前に自社を活性化したらどうか」と投げ返される始末で、サービス内容を検討してもらえる状況ではなかった。(経済ジャーナリスト・浅川徳臣)

退職金制度を廃止

 役員会ではさらなるコストダウンを検討し、人件費の圧縮策として、役員報酬の30%ダウン、さらに課長職以上は20%、一般社員は15%の給与カットを決断した。同時に退職金制度にもメスを入れた。退職金制度を廃止し、入社3年以上の受給対象者に対して、それまでの在籍期間から算出した退職金相当額を年末に一括して支払ったのである。

 この会社にとって一括払いは、相当な資金負担を強いられたのではないだろうか。ところが、そうでもなかったという。元部長は「在籍4年目で退職金は10万円、10年で100万円に満たない額でしたし、支給対象者はそんなにいなかったはずので、一括払いができたのでしょう」と話す。

 全社員400人のうち、支給対象者は90人だった。長時間労働で過重ノルマのブラック体質から、社員の多くが入社3年以内にどんどん入れ替わっていて、入社3年を超える社員は100人を割っていたのだ。

1 2 3
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる