破綻するブラック企業の楽しみ方(10)

卒業生たちに出資される会社に

 「わが社の卒業生たちに出資してもらえるような会社に盛り立てていきましょう。卒業生たちに出資してもらえたら復活は本物です」。社員一同、あ然とした。ありえない。100%ありえない。どこから、そんな発想が湧いてくるのか。苦し紛れの発言とはいえ、ここまで理性を欠いてしまったのか。

 社員は財務内容を正確に知らされていなかったが、希望退職に応じなかった社員にも、もはや辞め時だと認識する者が続いた。それは部長職や課長職に現われ、ポツリポツリと退職していった。前出の元部長もそのひとりである。

 「次の仕事のアテがなかったので、とりあえず会社に残りましたが、もう限界でした。給料の遅配や未払いが頭をよぎったので、給料がきちんと支払われているうちにサッサと辞めて、すぐに職探しをしようと判断したのです」

 希望退職で有能な社員の大半が抜けてしまったため、この時期に幹部社員に退職されてしまうことは、致命的な戦力ダウンとなる。後任者もいない。だが、会社側に引き止める手立ては何も残されていなかった。そして、社員の関心は、いつ発表されても不思議ではないXデーに集中した。その日は月曜日の全体朝礼だった――。
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