破綻するブラック企業の楽しみ方(10)

勧められた民事再生

 「仕事柄、多くの中小企業で退職金ゼロのリストラが行なわれている現実を見ていたので、もらえるだけマシだと割り切りました。ほかの社員も同じように思っていたようです。まあ、そう思うしかなかったわけですけど・・・・」(元部長)

 この時期、この会社の社長と専務はあらゆるツテを頼って資金調達に奔走したが、まったく埒が開かなかった。

 それどころか、ある財務コンサルタントからは「このまま行けば破産が目に見えているので、民事再生を申請しなさい。そうすればスポンサー企業が見つかるかもしれない」と促されたのだった。


 しかし、民事再生も倒産のひとつの形態である。これに踏み切ったら、自分には倒産企業の社長というレッテルがついて回る。再起を果たそうと企図したところで、日本のビジネス界は倒産社長にやすやすとチャンスを与えてはくれない。敗者復活など幻のようなものだ。それが現実であると、社長は暗澹たる心境に陥っていったという。

 追い詰められた社長は、ある日の全体朝礼で珍妙な発言を口にしてしまう。

1 2 3
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる