9月22日、任天堂の前社長、山内溥(やまうちひろし)相談役の社葬が、京都市南区の同社本社で執り行われた。約2000人が参列し、京セラの稲盛和夫名誉会長らが参列するなど「さすが世界の任天堂」と思わせた。ただ、生前の山内氏を深く知る人の見方はすこし違う。「山内氏は財界活動などに批判的で、息子や女婿に社長の座を渡さず、ゲーム会社のトップなのにほとんどゲームをしなかった。かなり変わった経営者だった」(50代広告業界関係者)という。
実は無給だった
たとえば、2013年3月期の任天堂の配当は年100円だから、山内氏には配当収入だけで約14億円もあった。「10億や100億円の資産の増減にまったく興味がなかった」(任天堂関係者)というのも、おおげさではないだろう。
亡くなった日の株価(1万1090円)で計算すると、遺産は株だけでなんと約1570億円。2007年には、任天堂株には7万3200円もの値がついていた。その時点で資産は1兆円を超えていたから、金銭感覚は凡人の想像をはるかに超えていたに違いない。
2010年、山内氏が75億円を寄付した京都大学の新病棟が完成している。その4年前には京都の文化施設にも20億円の寄付を行っている。晩年のこうした行為をみれば社会的貢献に熱心な人だったように思うが、近い人たちはそうは言わない。
「財界活動などには批判的で、“企業は税金をたくさん払うことこそ社会貢献”と公言していた」(京都経済界関係者)。だから、有名企業でありながら、京都商工会議所などの活動には一切タッチしなかった。
京大病院への寄付については、「自身が目の治療で京大病院に入院し、病棟の老朽化がはげしいことを目にして自ら申し出た。自分で見て、自分で感じたことしか信じない人だった」(同)ようだ。
さて、山内氏の保有株の行方が気になるところ。