脱税は真実よりもリアリティでシラを切り通せ「闇の番人」田中森一(5)

「言うと殺されます」で泣き

 「確かに月に1000万円くらい収入がありましたが、うち700万円くらいはヤクザにお守り代として渡しました。事務所の維持費や人件費もかかり、儲けはほとんどないんです」

 警察や検察の取り調べの段階でこの話をしてしまうと、「どこのヤクザもんや、言わんかい、コラ!」となるから、捜査の段階ではお守り代のことは伏せておく。

 「ヤクザのことは言えなかったんです。言うと殺されます。本当なんです。だからヤクザの名前を言うのだけは勘弁してください」

 検察官もそんな答弁を許さない。「ヤクザの名前を言え!」「言えません」それでも検事が追求すれば、「重複尋問や。本人が言えんと言ってるじゃないの」法廷で田中が声を張り上げる。裁判所が認めないときは、関係ないヤクザと結託して法廷で証言させる。

 「確かにお守り代は受け取りましたけど、仲間10人で分けたんで、わしが受け取ったのは雀の涙のようなもんです」

 この戦術で裁判官も検事もどうしようもなくなり、脱税に関して無罪。国税局が課税してきたら、「日本の裁判所は真実に基づいて裁判をしとる」と、凄んでみせる。

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