ゆかしメディアがその富裕層本の書評を行う第3弾は「富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか?」(高岡壮一郎著)。純金融資産1億円以上の人のオンライン上のプライベートクラブ「YUCASEE(ゆかし)」の会員に多い30、40歳代を中心とした比較的、若いインテリ富裕層「インテリッチ」の姿に迫っている。停滞する日本国ににあって、その後の富裕層人口の増加を予感させる。
147万人⇒232万人
「どんなに頑張っても自分は上に上がれない」。果たしてそうか。
本著「富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか?」に人気コミック「ドラゴン桜」の社会現象が紹介されている部分がある。平成17年度の文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞し、その翌年度に東大の受験生が2割増加したそうだ。そうしたことから、「本著で、富裕層が2割増えてほしいという願いを込めて」として、ゆかし会員が富裕層になった行動背景を紹介している。
この本は2008年に発表されたものだが、その当時の日本国内の富裕層人口は147万人(ワールドウエルスレポートより)だった。
そこから2割ということは、約30万人増加するという計算になる。ところが、フタを開けてみればそれどころではない。2013年には約58%増の232万人となっており、増加スピードは高岡氏の想定、もしくは願望をはるかに上回っていたのだ。
いつの時代にも変化をとらえてチャンスを掴み、富を生みだしていく人たちがいる。頭脳明晰でリスクを取る行動力を有している、いわゆる「インテリッチ」が増殖しているのだろう。
この中では、2008年の発表時点でのゆかし会員の属性が紹介されている。新世代の富裕層の特徴を掴む意味でも、おさらいがてら見ておきたい。
「全員平等というのはおかしな話ですよね」
◆純金融資産の内訳
1~5億円 75.7%
5~10億円 14.7%
10億円以上 9.6%
◆世帯年収
1000万円未満 9.7%
1000~1500万円未満 17.9%
1500~2000万円未満 8.2%
2000~3000万円未満 17.9%
3000~5000万円未満 20.0%
5000~7500万円未満 10.8%
7500~1億円未満 8.2%
1億~5億円未満 5.6%
5億円以上 1.7%
◆ゆかし会員の年齢
20代 2.9%
30代 25.6%
40代 42.9%
50代 19.7%
60代 8.9%
これらの要素を総合すると、年収3000万円くらいで1~5億円の資産を持つ40代くらいということになる。ある意味で、2008年までに新たに富裕層になった人たちと言っていいだろう。
その後、リーマンショックが起き、さらには日本では2011年に東日本大震災という未曽有の大災害も発生している。それでも富裕層がここまで増加したのは、行動一つでのし上がることができる時代になったとむしろ喜ぶべきなのではないか。
この本には、ゆかし会員のコメントが数多く掲載されている。一般的にメディアでは本音をいうことが少ない富裕層も、心の声をぶつけているように見える。興味深いものをいくつか拾ってみよう。
40代会社員(東京都)「職場の人には言いません。FXの売買で資産が数億円あるなんて話をしたら、妬まれて仕事に支障が生じます」
50代医師(東京都)「努力した人としなかった人で差が出るのは当たり前で、全員が平等ということの方がおかしな話ですよね」
30代会社員(東京都)「どうすれば税負担が少なくできるかは知っていますが、興味はありません。ノウハウを知っているかどうかで同じ所得で負担する税金に違いが出るのがいいとは思いません。隠れてコソコソするのは好きじゃない」
30代個人投資家(東京都)「格差が問題になっていますが、正直、理解できません。弱者を救済することが必要ですが、中にはお金がないと言いながらもいつも遊んでいる人もいます。今の日本ではやる気さえあればチャンスは無限にあるじゃないですか。お金持ちが悪だ、お金持ちから税金を取れというのはおかしいですよ。相続税も払っているのはお金持ちだけですよね」
40代投資家(東京都)「一般の人が興味を持った時点で、相場はピークですよね。私はマネー雑誌をよく見るのですが、そこで注目されていると売りサインです。逆にゆかし会員が興味を持っている情報には、自分も関心を持ちます。成功者についていくのも、投資家のひとつの手ですからね」
富裕層という存在を悪だという考え方も世間にはいまだに根強い。しかし、高岡氏は「誰かがお金持ちになれば、誰かの尾根がなくなるということはない」と言っているように、誰かが富裕層になることで誰かが貧しくなるという発想は社会にもとってもマイナスにしかならない。むしろ、富裕層になるチャンスは拡大している。その事実に目を向けなければならない。
「富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか?」(高岡壮一郎著)
評価(5点満点):3.0点
著者:高岡壮一郎 東京大学卒、三井物産入社。海外投資審査・IT事業等に従事後、2005年にアブラハム・グループ創業。
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