エステ・美容業界の顔的な存在で、「たかの友梨ビューティクリニック」(運営会社:不二ビューティ)の創業者でもある高野友梨氏。不幸な生い立ちから「成り上がり」を座右の銘とする熱心な矢沢永吉信奉者で、言わずと知れた巨大エステ帝国を築き上げたカリスマだ。公益通報を行った従業員に自ら脅しをかけた音声データも公開されるなど、現代は、空気を読み間違えたカリスマ経営者は一転して「ブラック経営者」への転落が待ち受けており、窮地に立たされている。
「エステ業界の矢沢永吉」
事の発端は、同クリニックの仙台店が残業代などの是正を労基署から勧告されたことを発表する直前に、高野氏が対象とした従業員を集めて、お説教をしたことだった。その音声データが朝日新聞によって公開されてしまい、「36協定」「公益通報者保護法」を知らないという経営者としての恥部を知らしめてしまったのだった。
「労働基準法にぴったりそろったら、(会社は)絶対成り立たない。つぶれるよ、うち。それで困らない?」などと従業員を問い詰めたのだった。
「36(サブロク)協定」とは、労働基準法第36条の規定どおり、延長勤務、休日勤務を労基署に届出することによって労働基準法違反にならなくなるもので、残業を認めたことになり、超過勤務などの手当てなどを支払わなければならない。また、「公益通報者保護法」は、会社の法律違反を通報した人への不利益な処遇を禁じたものだ。
カリスマ経営者にしては、迂闊だったとしか言いようがない。
高野氏は私生児として生まれたことを自身で公言しているが、不幸な生い立ちから養子に出されて満足な食事や勉強時間を与えてもらえずに育ったという。そうした境遇から這い上がり、現在の年間売上高160億円以上のエステ帝国を築き上げた。ちなみに売上高は業界3位である。
・TBCグループ 360億円 12年12月期
・ミュゼプラチナム 246億円 同8月期
・不二ビューティ 163億円 同9月期
成り上がり経営者独特の自身の成功体験に縛られた格好で、精神性が問題視されているようだが、カリスマを演じなければならない境遇からもやはり世間的な非難の声を大きくしているのではない。