東京・港区の水害危険地域と地価への影響、南青山、南麻布、西麻布…

地価への影響はない?

 「心理的な影響はあると言えばあるし、ないと言えばないし。それは買い手の側がどう考えるかです。広島で危険区域に指定されると地価が下がるなどというような話も出ていましたが、危険だと思う区域はすでに業者にはわかっていますし値段にも反映されているので意味はありません。ただ、行政から指定されると建築制限が課される場合もあったり、地下を下げる要因にはなりえますが、それほど大きな影響はないのでは。一般的には、昔から最寄りの河川までの距離が地価に与えていた影響は大きいですが」

 こう話すのはあるベテランの不動産業者だ。

 ブランドエリアが数多い港区の資産価値の高さは国内でも屈指であり、港区内では不動産は底を打ち国税庁発表の路線価で前年よりも10%近く上昇する地点も出るなど、資産価値は相変わらず高い評価を受けている。多少の危険の可能性も織り込まれているというのならば、むしろ、それほど危険ではないのかもしれない。

 ちなみに、過去には水害と地価との相関関係を調べた研究が盛んに行われている。それだけでも、日本が災害大国であるということがわかるのだが、その一つ「首都圏における浸水危険性の地価等への影響」(2005年、東京大学経済学研究科、斎藤良太氏)によれば、内水氾濫が主な原因である過去の浸水実績と地価に強い負の相関が見られたという。また、マンションの分譲価格で都心部では影響は見られなかったが、多摩川浸水区域、荒川浸水区域では3.6~5.7%の分譲価格が下落するという結果が出ている。

 いたずらに災害危機をあおるつもりはないが、やはり、用心だけはしておくに越したことはない。

1 2 3
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる