いつか自分の物件が事故物件に
大島氏が事件現場に自身で足を運んでいた時に「いつかは自分の物件でも起きるのではと思い、(不動産投資家でいることが)怖くなりました。少子高齢化とかいう以前の問題ですが」という。不動産投資のリスクというよりも怖さを肌で感じたことも、大家稼業を引退するきっかけになった。
例えば次の2件の事例があるが、これらは事故物件と事前に知らされることなく購入者が買った例。いずれも後に知るところとなり、訴訟となった。
◆福岡高裁(平成23年)
特殊性風俗営業に使用されていた住居を知らずに購入した住民が、後に知ることとなり耐えがたいほどの心理的な負担を負ったとして仲介事業者を訴えたもの。事業者はその事実を知らせることはなかった。売主、事業者の両者に瑕疵があったことが認定されている。
◆松山地裁(平成25年)
殺人事件被害者の遺族が自殺した住宅の跡地に造成された住宅を、事実を知らされることなく購入し、後に知るところとなった。事業者は契約時には知らなかったが、代金の引き渡し時には事実を知っていたのに知らせなかったことで、裁判所は住民の訴えの一部を認めた。
大島氏は「事故物件をなかったことにしたい悪い連中もいるにはいますし、転売を続けていくことで、不動産事業者でさえもすべてを知らなかったということもありえるのです。(事故物件の訴訟で)最高裁まで行ったものは一つとしてありませんから」として、自分の財産を自分で守らなければならない重要性を説く。
また、事件、事故以外にも孤独死などの自然死という社会問題もある。