◆「後継者は一族にこだわらない」
「(大塚家具は)私は自分の家族の会社とは思っていません」
これは勝久氏が先の訴訟で、7月13日に東京地裁で行われた本人尋問の中で証言した言葉だ。この尋問の時点ではすでに匠大塚は設立された後であり、まるで新会社の設立をほのめかしているかのようでもある。この尋問では、一連の経緯や匠大塚設立など背景となるような2人の信条が吐露されている部分もあるので、振り返っておきたい。
「なぜ遺言書が必要なんですか、まだ作っていませんし、そういう考えがありませんでした。株式を売却すればよろしいじゃないですか。そして、ちゃんと税金を払ったらよろしいじゃないですか」
これは自身が保有する大塚家具の株式をききょう企画に移すという久美子氏の提案には反対で、5人の子供たちそれぞれが株式を継げば良いという考えを示したものだ。また「私は自分が力がなきゃ、やめさせられるというつもりで経営してきました」と、経営トップは実力主義、成果主義であることを強調した。
その上で「いい会社であれば、会社を存続する人があれば、色々な方法があります」と後継者を一族から出すことにこだわりがないことや、他の会社に買収されることも仕方がないという意見を述べている。
久美子社長の弟で長男の勝之氏が当初は、大塚家具株式59万株、ききょう企画の株式50%を保有するなど後継者的な位置付けともされたが「ただ長男というだけ。跡を継ぐかもしれないと思ってやってきただけで、継がせると決めていたわけではないし、そういう決まりもありません」と証言している。
一方の久美子社長だが、勝久氏のことを終始「原告」と呼び続けており、もはや父親ではなく、退出した前経営者という第三者として見ているかのようだった。また、証言も2人の間でまったく食い違っている。