1100万ポンド(約20億円)の値がついた伝説の名車「フェラーリ375-Plus」(1954年製)を巡り、オークションハウスとオーナーが法廷で争っている件で、原告オーナーの訴訟費用が800万ポンド(約15億円)に上ったことが書面から判明した、と英デイリーメール電子版が伝えている。幾多のオーナーを魅了し、その一方でオーナーに災いをもたらす「呪われた」名車として知られた同車は、またしてもオーナーに災いをもたらした格好だ。
「フェラーリ375-Plus」(1954年製)については、ゆかしメディアでも過去には、落札時と提訴時に伝えているが、1954年に生産された6台のうちの1台でル・マン24時間レースにも出場した名車である。
◆参考:栄光と盗難の60年刻む「フェラーリ375-Plus」18億円で落札
◆参考:ランジェリー大富豪「魔性のフェラーリ」めぐり訴訟
ただ、ここにいたるまでの歴史の詳細は上記リンクに譲るとして、すさまじいもので、不幸の連鎖ともいうべき存在でもある。長年の放置、盗難、無断転売、警察の捜査、相続争いなどで欧州と米国の間を行ったり来たりしており、ようやく昨年のボンハムオークションに登場し、「ヴィクトリアズ・シークレット」などで知られるリミテッドグループ創業者レス・ウェクスナー氏(78)が1100万ポンドの高額で落札している。
◆1955年 米国人レーサーのジム・キンバリーの手に渡る。
◆1957年 米国人コレクター、カール・クレーフェの手に渡る。
クレーフェルは改造マニアでもあり、マシンをバラして長年にわたって放置してしまったのだ。のちに2人の男が廃棄しているものだと勘違いして持ち去ってしまう。そして、欧州のコレクターに転売してしまったのだった。
◆1988年 盗難を知ったクレーフェルがFBIなど捜査当局に届け出る。
◆1989年 氏名不詳のフランス人コレクターが5万ドルで購入している。
◆1990年 ベルギー人ドライバー、ジャック・スワーテルに所有権が移転した。
結局は「盗難」被害者オーナーと、「盗難車」を買い取ったオーナーが同時に存在し、2人が死亡して、その遺族による争いで権利関係が実は解決されていないということのようだ。
そこでウェクスナー氏が昨年、ボンハムを相手取って落札代金の返還などを求める訴訟を起こしていた。現在、英国の裁判所で審理が行われるところである。しかも、訴訟費用はすでに15億円だといい、最終的に車の落札額を超えてしまわないのだろうか。呪われた名車は、輝きを増すとともにオーナーを不幸にしていく。