特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの不足を補うために制度として誕生した「サービス付き高齢者向け住宅」。規制緩和による投資妙味を謳うことで、地方の富裕層や地主も巻き込んだ乱立し芳しくない評判が定着したこともあった。しかし、現在の高齢者福祉業界は急激にハイブリッド化し、サービス過剰合戦に突入している。最新事情、選び方などを見ていきたい。
◆国策によるブームで筋の悪い投資物件も増殖
ベネッセコーポレーション、学研、オリックス、ワタミ…。こうした名だたる企業などもすでに参入しているのがサービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)だが、2011年に国交省、厚労省が創設した「高齢者住まい法」によって基準が定められた高齢者の暮らしを支援するサービスの付いたバリアフリー住宅のことを指す。特養の待機老人が約50万人いるという状況で、介護報酬の削減を大きな目的に国策として誕生し、参入に際しては税制面などで優遇措置も多く、様々な業態から新規参入が相次いだ。厚労省によると、サ高住は全国に約12万戸があり、2020年までには約60万戸を目指しているという。
「入居率100%」「家賃下落なし」。
これは不動産投資の広告のように見えて、サ高住の広告なのだが、こんなうまい話があるわけがない。それでも実際に投資を決めてしまう富裕層や地主もいるのだ。関西のある社会福祉法人理事長は「要は儲かりさえすれば、ハコの中身は何でもいいんです。サ高住は医療費が上乗せされると思って甘く考えて始めた人もいます」とあきれ顔で話す。
関西のある40代資産家は「自分の父親が業者から提案を受けていいましたが、友人に聞いてみると高齢比率が高い場所だと入居率が3分の1以下という所もあるということでした。おまけにサブリース契約だし、『土地活用の●●建●』と同じでは…」と語る。
こうした広告の根拠となるのは、入居者からの医療報酬が得られるからというものだ。家賃だけだと不安だが、そこに医療報酬が上乗せされるなら投資効率も良いのではないか、と考えがちだが、それが間違いだと気づくのは遠い先のことではない。
そうした背景もあり、「要介護4以上の人を頼みますわ」と、挙句の果てにこんな注文が出されることもある。