約5000億円の人類史上最高額となる離婚大富豪を一時的に生んだ、ロシアの大富豪ドミトリー・リボロフレフ氏とエレナ前夫人の離婚訴訟で、このたび和解で合意したと双方が発表した、とスイスの現地メディアが伝えている。和解条件は明らかにされていない。離婚解決金は一審判決の42億ドルと、二審判決の6億ドルの範囲内ではないかと見られる。
リボロフレフ氏は総資産85億ドル(フォーブス試算)。ロシア最大の化学肥料メーカーのウラルカリの筆頭株主となり、後に株式を売却するなどして資産を築いた。2人は1987年に結婚し2人の娘をもうけたが、リボロフレフ氏に不倫が相次いだため、2009年に61億ドルの損害賠償を求めて訴えを起こされていた。前夫人は不倫の証拠を掴むために女スパイを雇うなどして証拠を収集したという。
昨年出た一審判決では、財産分与をほぼ最大限に認めた。その時点では、人類史上で最高額の離婚解決金となった。
◆第一審判決時の離婚解決金ランキング
1 ドミトリー・リボロフレフ&エレナ 45億ドル
2 ルパート・マードック&アンナ 17億ドル
3 バーニー・エクレストン&スラビカ 12億ドル
4 アドナン・カショギ&ソラヤ 8.7億ドル
5 スティーブ・ウィン&エレーン 7.4億ドル
6 クレイグ・マッコー&ウエンディ 4.6億ドル
7 メル・ギブソン&ロビン 4.2億ドル
8 ロバート・ジョンソン&シェイラ 4.0億ドル
9 アーノルド・シュワルツエネッガー&マリア 3.7億ドル
10 ローマン・アブラモビッチ&イリナ 3億ドル
※敬称略
ただ、ジュネーブ高裁での二審は、リボロフレフ氏の言い分を取った。その保有する85億ドルの資産だが、かなりの部分を2人の娘のための信託財産にするなどある種の巧妙な資産隠しを行っていたが、娘のものであると認定されたのだった。この点については、エレナ前夫人側は明らかな財産隠し目的であると反論していた。
信託は2005年に設定され、2008年に資産の多くを占めるウラルカリの株式を売却したり、2012年に米NYで当時は史上最高額の取引額となった8800万ドルのマンションを購入するなど女子大生の長女名義の信託財産は膨れ上がっていった。これは終始、離婚を前提としたものではないと主張し、争点にもなっていた。
ハーグ国際条約下では、信託財産は受益者の財産として拘束力を持ち、控訴審ではそれが認められた格好となった。
エレナ前夫人は最高裁で争う意思を表明していたが、上積みはないと踏んで和解に応じたのか。
一方で、リボロフレフ氏は、詐欺で逮捕された絵画商イヴ・ブーヴィエから、ピカソの絵画などを購入。被害者ではあるが、タックスヘイブンに登記された会社の資産とするなどマネーロンダリングが疑われもしていた。最近になり、絵画はピカソの遺族に所有権を譲るなどしており、社会的な信用を取り戻そうともしている。
これ以上の解決金を勝ち取ってもすべての隠し資産を確定、取り切れないおそれもあるエレナ前夫人、早く解決してイメージ回復をしたいリボロフレフ氏ともに和解での早期解決は双方にメリットは大きいようだ。