1100万ポンド(約17億円)で落札された伝説の名車「フェラーリ375-Plus」(1954年)を巡って、落札者である米大富豪レス・ウェクスナー氏(78)がオークションハウスを相手取って、代金の返還などを求めた訴訟がロンドン高等法院で18日行われ、正式にウェクスナー氏の所有であるということで双方が受け入れ解決した。英デイリーメール電子版が伝えた。同車は悲劇の来歴を持つ名車として知られ、2014年の落札後に複数のオーナーの相続人が名乗り出て所有権を主張するなどトラブルが続いていた。
詳しくは、下記二つのリンクに譲るが、ドロドロの人間模様が彩られた来歴をたどってきたが、そもそも訴訟沙汰になった理由としては、過去のオーナー(故人)の相続人が落札後に所有権を主張し始めたために、ウェクスナー氏が最低でも落札額の返還を求めることになったことにある。つまり、所有・相続の権利関係をオークションハウスが完全に整理することなく、オークションに出してしまったということになる。
◆栄光と盗難の60年刻む「フェラーリ375-Plus」18億円で落札
◆20億円「魔性のフェラーリ」、訴訟費用すでに15億円に
◆1955年 米国人レーサーのジム・キンバリーの手に渡る。
◆1957年 米国人コレクター、カール・クレーフェの手に渡る。
◆1988年 盗難を知ったクレーフェがFBIなど捜査当局に届け出る。
◆1989年 氏名不詳のフランス人コレクターが5万ドルで購入している。
◆1990年 ベルギー人ドライバー、ジャック・スワーテルに所有権が移転した。
少し簡単に触れておくと、1957年に所有権を得たクレーフェは狂信的なマニアでもあり、が自宅の庭でマシンをバラして、その状態のまま放ったらかしにしてしまったことが悲劇を呼ぶきっかけとなる。バラしたまま他の車に興味は移り、放置のまま長年経過、男たちが廃棄処分したものだと思い盗難し、これが欧州のコレクターの手に渡り、再び欧州の地を踏むことになる。
クレーフェは盗難届をFBIに提出し男たちは逮捕される。しかし、刑事訴訟では、盗んでだのではなく捨てていたものであるという認識を持っていたとして無罪に。90年にオーナーとなったスワーテルがレストアして復元するにいたった。その後スワーテルは亡くなって、ボンハムオークションで売却されることになった。
ただ、不思議なことに魔性の名車はどこまでも悲劇を運んでくるようになっている。
盗難の被害に遭ったオーナー・クレーフェ家の相続人、盗難品を買い取ったオーナー・スワーテル家の相続人の双方が所有権を主張し、互いに争い始めたということが明らかになった。これは昨今のヴィンテージフェラーリ価格の高騰がもたらした側面もあるだろうが、同時にここまでひきつけるだけの魔力があるのだろうか。
一方のウェクスナー氏は 1963年にわずか50万円ほどの借入金を元手にして、米オハイオ州に女性衣料品ショップをオープンさせ、1982年にヴィクトリアズ・シークレットを100万ドルで買収し、現在は年間売上高70億ドル以上を誇る事業の育てた。こちらも、ヴィンテージカーのコレクターとして知られる。
ウェクスナー氏が支払った訴訟費用だけで、すでに日本円にして15億円以上掛っているとも言われており、魔性のフェラーリの騒動を巡ってはこれでひと段落がついたものの、今後も新たな魔性の来歴を重ねていくのかもしれない。