・筍の木の芽焼
通常は魚の焼物が定番だが、ビーガン向けでは動物性の材料を一切使わずに作る。
味覚的な満足感以上に、五感で楽しんでもらうための工夫を凝らし、仕上げに炎で香り付けを行う。
・蕪蒸しのお椀
通常の蕪蒸しのお椀は動物性の出汁、白身魚、卵白でふわふわにした蕪を使って作るところを、ベジタリアン向けには白身魚の代わりに椎茸を入れ、出汁も植物性のものを使う。
ムスリム向けには調味料を特別なものに変える。見た目は通常のものと変わらないという。
・蒟蒻と湯葉の刺身①:
魚を使わない刺身。湯葉と柚子・あおさ海苔・梅肉などで色と風味と香りを付けた自家製蒟蒻を、塩と醤油につけて食べる。
刺身の食べ方をリアルに楽しんでもらうため、わさびや薬味などは通常の刺身と同じように盛り付ける。
・蒟蒻と湯葉の刺身②:
①と同じだが、盛り付け方を薄造り風にアレンジ。
「実家が三重県で日本料理店をしていて、小さいころから和食の料理人になると決めていました。修行を終えたのち、和食以外の世界を知っておきたいと、世界一周の旅に出たんです。
世界のいろんなところで日本食に興味のある人に出会いました。ですが、懐石料理を知っている人にはまったく出会いませんでした。
懐石には日本文化の魅力が詰まっているのに知らないのはもったいない、もっと外国人に知ってもらいたい。そう思いました。
2015年に店を構えたときも、英語のメニューなど用意していました。口コミやホテルからの紹介などで実際に外国人のお客様にお越しいただくうちに『ベジタリアンが食べられるものはないか?』『いろいろな食の制限があるんだけど』というご相談が増えてきました。
どうすればそれらのお客様のご要望に応えられるか? を考え、献立を考えてきた結果、対応できる環境が整ってきたというところです。
ハラール、ビーガンのほかに、小麦アレルギーの方向けのグルテンフリー懐石も用意しています。
食制限者用の懐石を用意するのは、正直に言って大変です。ハラールは完全に別工程で仕込まなければならないですし、ビーガンはオリジナルの献立を考える必要があります。仕入れも別になりますからコストもかかります。
ですが、せっかく日本に来られたのだから、日本を楽しんでいただきたい、おいしいものを召し上がっていただきたいと思っています。
外国から来られるお客様に、日本食の奥深さを味わっていっていただきたいですね」