世界に衝撃を与えた先週末のイギリスEU離脱。ポンドが大幅に下落し、ドルが一時期は99円台を記録、日経平均も下がるなど、イギリスやEUだけでなく世界の金融市場に与えた影響は大きい。
「数万人規模で雇用が失われる」「欧州に大不況が訪れる」「世界レベルの金融危機」
そのような報道もされているが、この数日で、「不況に強い」とされるヘッジファンドにどのような動きがあったかをまとめた。
ヨーロッパのヘッジファンドの大半は「残留」と予想
国民投票が行われる前、ほとんどのヘッジファンドは「イギリスはEUに残留するだろう」と考えていた。
ヨーロッパのヘッジファンドは、5つあれば4つが残留予想だった。では予想が外れ、多くのヘッジファンドは損失を出したのかと思いきや、決してそのようなことはない。
まず、離脱と残留どちらに転じてもよいよう、多くのヘッジファンドは現物資産の金を大量に買い越していた。
離脱決定後、金の価格は1トロイオンス当たり1340ドルまで上昇し、ここ2年間でもっとも高い金額となった。これほど急激な値動きも2008年以来となる。
ブルームバーグによると、ヘッジファンドによる金の買い越しは過去最大となり、上昇による利益を確保しているところがたくさんある。
ビジネスインサイダーオーストラリアの報じている、ここ最近の運用成績を詳しく見てみよう。
いくつかのヘッジファンドは、大きなリターンを記録している。約6000万ドルを扱うヌーウェーブマトリックスファンドは、それまでの年平均リターンが10%だったのを、先日の金曜日に12%へとアップさせたという。
約4兆2800万ドルを扱うクアドラティックキャピタルマネジメントは、2015年の運用開始以来最大のリターンを記録したという。同社はEU残留と予想していたが、配置の転換等で運用に成功したと言っている。
フォーブスが発表した昨年のヘッジファンド・マネジャーとトレーダーの報酬ランキングで17位に入るスティーブン・ショーンフェルド氏の資産を運用している2つのヘッジファンドも、好成績を収めている。運用成績は今年10%以上だったのを、先日の金曜日により高い数字を見込めるようになったという。
正確な数字についての言及はなかったが、ショーンフェルド氏はレバレッジも活用して120億ドル以上の運用を行っているという。
ヘッジファンドがリターンを上げた理由は?
「私たちはとても有利なポジションにいます」
ロンドンに拠点を置くヘッジファンドのオデイ・アセット・マネジメントの創業者、クリスピン・オデイ氏はロイターの取材に語った。イギリスの離脱に関連して15%のリターンに成功し、今年の損失の一部を取り戻したという。
フィナンシャルタイムスによると、オデイやマーシャル・ウェイス、TTインターナショナル、ウィントン・キャピタル・マネジメントなどのヘッジファンドが大きく成績を上げた理由が、イギリス株や債券の空売りだ。
今年の運用成績が不調だったヘッジファンドも多いが、今回の騒動を好機と見て運用に成功したところも多々あるようだ。
今回の国民投票も、今すぐにイギリスがEUを離脱するわけではなく、イギリスが2年後を目途に離脱するためのEUとの交渉が始まるという段階で、すぐに大きな影響が出るわけではないという見方もある。
前回の記事で触れたとおり、今回の離脱の結果今後どうなるかは不透明だが、効果的な投資の方法は多々ある。投資家は今後も市況に注意を向けておきたい。