医師が教える日中の眠気を覚ます効果的な方法

「一流の睡眠」を説く医師の裴英洙氏に、よい睡眠時間の基準をお聞きした(前回記事医師の教える「一流の睡眠」の基準はたった1つ)。

 睡眠時間が足りないときは当然として、睡眠をとれているときでも、日中に眠くなり、仕事に支障があるという経験のある人は多いだろう。
 日中の眠気対策はどのようなものが効果的かもお聞きした。

睡眠問題解決のキモは「When and What」

「日中に眠くなるのは、動物として極めて自然なことです。生物である以上、眠い時間帯があるのは当然。これを『日内変動リズム』といいます。慢性的な睡眠不足の人に限らず、誰もが14~16時に、特に眠くなるものです。

 私たち医師は、午後からの手術を行う前などに、よく20分程度の昼寝をします。眠気に耐えながらの手術は、大事故を起こしかねないからです。

 ただし、20分を超えて眠ると、体がより深いレベルの睡眠を求めるようになります。深い睡眠状態に入ってから無理やり起きようとすると、逆に疲れたり頭がぼんやりしたりして逆効果ですから、15~20分程度の短めの昼寝を推奨しています。可能であれば横になり、無理ならば椅子などに座りながらでもよいので、目をつぶり、リラックスします。

『眠気をとる最もよい方法は、しっかり寝ること』と言うのは簡単ですが、職場では昼寝しづらいところも多いはずです。どうしても、眠気に勝たなければならないときもあるでしょう。そんなときはどうするか。


 眠気対策は『When and What』。つまり『いつ、何を行うか』が重要と私は考えています。
 仕事のパフォーマンスを考える場合は特に、何もしなくても眠くなる時間は、眠くなりやすい行動は避けたほうがよいでしょう。

 たとえば、14時開始の会議などは、眠気の面からすれば最悪です。
 会議を設定する側の人ならば、できることならまず、その時間に会議を行わないことが理想です。

 また、会議を取り仕切る人が、会議中に出席者を眠らせないために大切なのは、『緊張状態』をつくることです。会議の出席者は、『どうせ話を聞いているだけ。自分がいてもいなくても何も問題はないだろう』と思うと、緊張が解けてついウトウトしてしまうものです。

 そこで、時々出席者の意見をランダムに求めたり、何の前触れもなく出席者に話しかけるなど、緊張状態を保つシチュエーションを用意するとよいでしょう。『いきなり当てられるかもしれない』というプレッシャーが、眠気を払拭してくれる可能性があるからです。

 その他、会議に限ったことだけではなく、昼間の眠気に打ち克つための対策としては、『体や口を動かしながらアウトプットすること』があります。

 まずは意識的に動くことで、少なくとも、デスクに座っているよりはずっと、眠気は解消されます。たとえば、次のような行動です。

・コピーを取りにいく
・エレベーターを使わずに階段でフロア移動する
・思い切って立って作業する
 など

 さらに『アウトプット』の視点を加えると、さらに効果的でしょう。たとえば、次のような方法です。

・営業に出るなど、社外の打ち合わせを入れる
・他部署にヒアリングに行く
・上司や役員など緊張感をもって接する人と会話する
 など

 どうしても眠気に勝てないときは、実践してみてください」

眠気対策に飲み物を飲むのは?

「『眠気防止にカフェインを摂取せよ』というのは有名な話ですが、『コーヒーを飲んだくらいでは眠気が飛ばない』という人もいるでしょう。

 初めてコーヒーを飲んだ子供がその夜に眠れなくなることはありますが、コーヒーを日常的に飲んでいる人は、コーヒーを飲んでいても眠くなることがあります。カフェインに対する耐性ができてしまうからです。日常的に、仕事中に何杯もコーヒーを飲んでいると、カフェインに体が慣れてしまい、効果が低くなってしまう傾向があります。

 アルコール依存症の人は、『今飲んでいる量では物足りない』と思うからこそ、さらに多量のお酒を飲み、依存していくことになります。『眠気覚ましにコーヒーを飲んでも効かない』というのは、それと同じ状態と言えるでしょう。

 また、カフェインの効果が出始めるのは、体内に摂取してから30分以上経ってからとされています。つまり、『眠いからコーヒーを飲んで眠気を覚まそう』と思った時点で、もう手遅れなのです。

眠気覚ましのドリンクは、内臓の健康とトレードオフ
「コーヒーよりも効き目が強いという、いわゆる『眠気覚まし』用のドリンクがたくさん市販されていますが、日常的に常用することは、私はあまりお勧めしません。
 ドリンクに含まれる人工的な化合物が、内臓、とりわけ肝臓に負担をかけるからです。また、飲みやすいように糖分が多く含まれており、糖を過剰摂取してしまう可能性があります。

 作用が強いということは、同時に副作用が強いということを意味します。眠気を覚ます力が強ければ強いほど、肝臓に強い負担がかかることにもなるのです。眠気の解消と引き換えに体を痛めつけるのは、よい対策とは言えません。『どうしても今日は』という時だけの、切り札にしてください。

 飲みもの以外に私がお勧めしている眠気対策は、『シャープペンシルの芯をペン先から入れる』ことです。これは、シャーペンの先端の鋭利な部分に意識を集中させることに意味があります。
 尖るものに対して、人は緊張するようにできています。また、人間の指先には数百万の末梢神経が集まっているため、指先を動かすこと自体に、眠気を覚ます効果があります。

 ただし、こうした対策も、毎回同じことをやっていると慣れてきてしまいます。『今日はコーヒーを飲む』『今日はシャーペン入れ』というように、ローテーションさせるのが効果的でしょう」

無理に『朝型生活』にしようとしない

「一般的に、夜は早く寝て、朝早く起きる『朝型生活』がよいと言われますが、決して全ての人に当てはまる話ではありません。人によっては、夜のほうが頭が冴えて仕事もはかどることもあります。

 ただ、人間は昼に活動し、夜に休むようにできている生き物ですから、本来休む時間である夜に活動することは、成長ホルモンの分泌などの上で悪影響はあります。傷が治りにくい、体調を悪くしたら治りにくい、太りやすい、生活習慣病になりやすいというリスクは高まります。

 そういう意味では、タバコのようなものだと言えるかもしれません。周囲の人への受動喫煙への配慮は絶対に必要ですが、体に悪いとわかっていて吸うのは、本人の自由です。
 夜型生活も、本人がリスクを知ったうえでそうしたいのであれば、無理やり朝型生活に切り替える必要はありません。体質に合わないことをすれば、それ自体がストレスになってしまうでしょう。

 大切なことは、『朝型・夜型のどちらかが優れているか』ではなく、『どちらが自分のパフォーマンスを向上させるか』です。それに加えて、特に夜型の生活は、体へのリスクがあるということを覚えておいてください。


 ここまで、さまざまな『睡眠問題解決法』を紹介してきましたが、全てを実行する必要はありません。できれば、複数の解決策を同時に実行せずに、自分の悩みに当てはまりそうなものを1つずつ試してみてください。

 複数の解決策を同時に試すと、あなたの悩みの根本的な原因が、どこにあるのかがわからなくなるからです。焦らず、できることから1つずつ改善して、自分にぴったりの睡眠習慣を見つけていく姿勢が大切です。
 他の誰かがおすすめする睡眠法が、あなたにぴったりと当てはまるとは限りません。睡眠は、個人の生活に依存した習慣であり、万人に共通する『正解』はないのです。

 睡眠が変わると、翌日のパフォーマンスが変わります。パフォーマンスが変わると、人生が変わります。何気なく睡眠をとらえずに、積極的に睡眠と仕事の関係を考えていただきたいと思っています」

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