「京セラの創業者であり、日本を代表する経営者でもある稲盛和夫氏は、京セラを立ち上げたばかりの頃、8人の創業メンバーと酒を飲みながら『今はこんな小さな会社だが、いつか京都一になろう。京都一になったら今度は日本一になろう。そして最後は世界一だ』としょっちゅう語っていたそうです。
最初は部下たちも『何を言っているんだ』と冷ややかで、稲盛氏が繰り返し言うたびに『また言うとる』と聞き流していましたが、何十回、何百回と聞かされるうちに、本当にかなうような気になったといいます。
目標を公言するだけでなく、チームや組織に共有することで、そのモチベーションをまわりに伝染させ、チームや組織全体のパフォーマンスを高める。
そうして、ただの町工場だった京セラを、一代で世界的企業グループに育てていったのです。
いきなり世界企業をつくることを目指すのは難しくても、チームやグループで大きな目標を定め、それを合言葉にすることで、だんだんできるようになっていく、そう思います」
「20世紀を代表する億万長者として知られ『地球上の富の半分を持つ男』とまで呼ばれたアメリカの実業家、ハワード・ヒューズ氏は、生涯を通じて飛行機を好み、映画会社を買収して本物の戦闘機や爆撃機を使った映画を制作し大ヒット、航空機製造会社の設立、航空会社の買収など飛行機関係の会社の経営にも関わりました。
自らの操縦で当時のアメリカ大陸横断記録樹立、さらには当時の世界一周最速記録を樹立するなど、その飛行機好き具合は尋常ではありません。
ヒューズ氏は、飛行機が儲かると考えてそれらの事業を行っていたわけではありません。とにかく飛行機が好きで、飛行機に関わっていたい、その思いがビジネスに結び付いていったのです。
そんな彼を見習ってできること、それは没頭できる大好きなことを見つけることです。誰もが小さい頃、大好きでそればかりしていたことがあったと思います。
それを思い出し、またやってみると、忘れていた情熱、挑戦できるものが見つかるかもしれません」
「戦前から戦後に活躍した政治運動家、実業家、慈善活動家の笹川良一氏は、『政財界の黒幕』『フィクサー』と呼ばれた人物です。
投資の才に恵まれ、米相場や先物取引で現在の価格にして30億円近い富を築いたとされます。
しかし私生活は徹底して倹約に励み、朝食はメザシ2本に卵かけごはんなどの質素なもので、口癖は『金銀財宝、別荘や骨とう品も死と同時に身から離れる』で、自分には一切使わず、福祉事業には惜しみなくお金を使いました。
戦後、A級戦犯として逮捕され、巣鴨プリズンに入獄し劣悪な環境を経験したことから、入獄者の待遇改善を要求し、刑務所に収容されている人たちに新聞、ラジオ、レコードを差し入れるなどしたほか、関係者の旅費や貧窮者の生活費なども私費で払っていました。ほかにも戦犯刑死者の遺族を援助する会を結成するなどしたのです。
そのような彼の姿勢は共感を呼び、多くの知己を得たことで政界にもパイプができ、その後も莫大な利権を手にすることにつながります。
彼の姿から真似できるのは、人のためにお金を使おうということです。儲けるために行っていたわけではないことが、めぐりめぐって何倍にも大きくなり帰ってきました。
難しいこと、大変なことをする必要はありません。ランチ代を100円浮かせたらその金額を募金する。それだけでいいのです。
人からより応援される人になるように、お金の使い方を考えてみる、とても大切なことと思います」