所得税に係る14種類の控除

 税金について考える上で欠かせないのが「控除」だ。節税のためにも、控除について知っておこう。
 所得税法では「所得控除」という制度が設けられている。
 所得税額を計算するときに、納税者の個人的事情を加味しようというものだ。所得控除にはいくつかの種類があり、それぞれの所得控除の要件に当てはまる場合には、各種所得の金額の合計額から各種所得控除の額の合計額を差し引く。

 所得税額は、差し引いた残りの金額を基礎として計算する。

 所得控除の種類は次のとおりだ。

1.雑損控除
2.医療費控除
3.社会保険料控除
4.小規模企業共済等掛金控除
5.生命保険料控除
6.地震保険料控除
7.寄附金控除
8.障害者控除
9.寡婦(寡夫)控除(女性の場合と男性の場合とで要件に差がある)
10.勤労学生控除
11.配偶者控除
12.配偶者特別控除
13.扶養控除
14.基礎控除

 このうち基礎控除の額は38万円となる。

 まずは雑損控除と医療費控除について説明する。

1 雑損控除とは?

 災害、盗難、横領などで資産の損害を受けた場合に受けられる一定の金額の所得控除

2 雑損控除の対象になる資産の要件
① 損害を受けた資産の所有者が納税者か納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が38万円以下の者

②「棚卸資産」「事業用固定資産等」「生活に通常必要でない資産」のいずれにも該当しない資産であること
注:「生活に通常必要でない資産」とは、別荘などの不動産や貴金属(製品)や書画、骨董などで1個または1組の価額が30万円超など、簡単に言えば「なくても生活に困らない高いもの」だ。

3 損害の原因
 次のいずれかの場合に限られる。

(1) 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の災害
(2) 火災、火薬類の爆発など人為的な災害、盗難、横領
(3) 害虫などの生物による災害
 詐欺や恐喝などの場合、雑損控除は受けられない。

4 雑損控除の金額
 次の2つで多いほうが適用される。

(1)(差引損失額)-(総所得金額等)×10%
(2)(差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円
(注)損失額が大きく、その年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後に繰り越し、各年の所得金額から控除することができる(3年間が限度)。

 なお、雑損控除は他の所得控除に先立って控除する。
「災害関連支出の金額」とは、災害により滅失した住宅、家財などを取壊しまたは除去するために支出した金額などを指す。

5 差引損失額の計算方法
 差引損失額=損害金額+災害等に関連したやむを得ない支出の金額-保険金などにより補てんされる金額

「損害金額」は、損害を受ける直前のその資産の時価を基にして計算する。
 なお、平成26年分から、損害を受けた資産が減価償却資産である場合には、その資産の取得価額から減価償却費累積額相当額を控除した金額を基礎として損害金額を計算することができる。

「災害等に関連したやむを得ない支出の金額」とは、「災害関連支出の金額」に加え、盗難や横領により損害を受けた資産の原状回復のために支出した金額を言う。
「保険金などにより補てんされる金額」とは、災害などが発生して受け取った保険金や損害賠償金などの金額だ。

6 雑損控除を受けるための手続き
 確定申告書に雑損控除に関する事項を記載し、災害等に関連したやむを得ない支出の金額の領収書を添付するか、提示する。給与所得があれば、源泉徴収票(原本)も必要となる。

医療費控除

 その年の1月1日から12月31日までの間に自己または自己と生計を一にする配偶者や、その他の親族のために医療費を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができる。

2 医療費控除の対象となる医療費の要件
(1)納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者や、その他の親族のために支払った医療費であること
(2)その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること

3 医療費控除の対象となる金額
(実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額。最高で200万円

(1)保険金などで補填される金額
例:生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
注:保険金などで補填される金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引くため、引ききれない金額が生じても他の医療費からは差し引かない。
(2)10万円
(注)その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等5%の金額

4 医療費控除を受けるための手続き
 医療費控除に関する事項を記載した確定申告書を提出する。
 医療費の支出を証明する書類、例えば領収書などについては、確定申告書に添付するか、確定申告書を提出する際に提示が必要だ。
 また、給与所得があれば、源泉徴収票(原本)も添付する。

5 セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
 治療だけでなく、予防に関しても認められる控除が出てきた。国税庁のホームページにある詳しい説明によると「平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の特定一般用医薬品等購入費を支払った場合において、その年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取り組みとして一定の健康診査や予防接種などを行っているときには、選択により、その年中の特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金等により補填される部分の金額を除く)のうち、1万2000円を超える部分の金額(8万8000円を限度)を控除額とする税制」だ。

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