ファッション通販のZOZOTOWN(ゾゾタウン)などを展開するスタートトゥデイ社長の前澤友作氏が、アメリカ、サザビーズのオークションでジャン・ミシェル・バスキアの絵画を1億1050万ドル(約122億円)で落札したと、ニューヨークタイムズが報じた。落札された作品は1982年に発表されたドクロを描いたもので、題名はない。
122億円の落札金額は、サザビーズで行われたオークションで6番目の高額となる。1億ドル以上の落札額も過去に10回あるだけだ。
前澤氏は昨年5月にもクリスティーズのオークションでバスキア作品を5728万5000ドル(当時のレートで約62億円)で落札し、バスキア作品の過去最高額となっていた。自身がその記録を更新した形となる。
前澤氏は自身がストリートカルチャーに深い影響を受けたことから、コンテンポラリーアートの振興を目的とした現代芸術振興財団(東京・六本木)を設立し理事長も務めている。
昨年に初めてバスキア作品を落札した際はSNSを通じて「ストリート出身であるバスキアの最高傑作を、ストリートカルチャーにいろんな影響を受けた僕が、恩返しとして、日本のどこかで展示して日本のみなさんに思う存分近くで見てもらえたらなと思い、思い切って落札しました」とコメントしており、今回も「アートを好きになってよかった。このペインティングをはじめて見た時、心からそう思いました」とコメントしている。
昨年、バスキアを最高額で落札したことのインパクトは大きかったようで、前澤氏は週刊ダイヤモンドの取材にて、ハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオのロサンゼルスの自宅に招待されたことを明かしている。
自身もアートコレクターであるディカプリオが「バスキアを最高額で落札した前澤という男は何者だ?」と興味を持ち、ディカプリオの家では前澤氏と「俺もバスキアが欲しかった」「俺は君の家のこれが欲しい」といったアートに関する話に花が咲いたという。
美術関係者の間では「一瞬でMaezawaの名前が世界中に広まったのだから、62億は安い買い物」という声もある。
デヴィッド・ボウイもコレクターの1人
価格は100億円、ディカプリオを虜にする、そこまでの価値を持つバスキアとは、どのような画家なのか?
ジャン・ミシェル・バスキア(1960~1988年)は、ニューヨークの下町、ブルックリンに生を受け、独学で絵を学び幼少の頃から絵を描き始めた。
街や地下鉄などの壁にスプレーで描く絵が人目にとまるようになると、評価する人たちも現れていった。
バスキアは絵入りのポストカードやシャツなどを販売し、やがては個展を開くまでとなった。現代アートの巨匠アンディ・ウォーホルとは互いに認め合い、共同作品を発表するなどしたが、精神不安定に陥り薬物依存を強めていった結果、1988年に27歳の若さで亡くなった。
2016年に死去したデヴィッド・ボウイも作品を所蔵していた(ボウイはバスキアの生涯を映画化した「バスキア」に、バスキアの盟友アンディ・ウォーホル役で出演している)。
ボウイの所蔵していたバスキア昨品『Air Power』はボウイの死後にオークションにかけられ、約880万ドル(当時のレートで約9億3500万円)で落札された。
「1億ドルを突破したバスキアの価値は今や、フランシス・ベーコンやパブロ・ピカソと同列」
バスキアの専門家であるディーラーは語った。
「1億ドルと聞いたときは、さすがに夢かと思ったよ。バスキアの代表作であり、重要なこの作品にそれだけの額を支払うマエサワを称賛したい」
長年にわたるバスキアのコレクター、ラリー・ワーシュ氏もその金額には驚いたようだ。
「もしかすると今回の金額はやや高いかもしれないけれど、彼の作品に価値を認め、これだけの額を支払うコレクターがいるのは全然おかしなことではないね」
前澤氏は自らのコレクションを多くの人が鑑賞できる美術館を千葉県につくる構想があると公言しており、2つのバスキア作品は美術館の目玉になりそうだ。