株価好調で不調は空売りヘッジファンド

 21年ぶりという高値を記録した日経平均と、2万ドル超えが続き、俄然として好調のダウ平均株価。そのように全体的に株価が好調で、ヘッジファンドも成績を上げている。
 ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によると、ヘッジファンドの1~9月の運用成績の平均は資産加重ベースでプラス4.3%となり、全体的に成績好調だ。

 そのように全体的に好調な運用成績のなか、不調のヘッジファンドがある。著名ヘッジファンド・マネジャー、ジェームズ・チェイノス氏の「空売りヘッジファンド」だ。

 チェイノス氏のファンドは空売りを手段とし、下がることでリターンを出す。値が下がりそうな銘柄や会社を見つけ出す術に長けていて、「金融界の探偵」の異名をとる。2001年にはアメリカのエネルギー会社大手のエンロン社の不正会計を見抜いたことで有名だ。
※空売りとは何かについてはこちら

 かつては伊藤忠商事をターゲットにし、2016年7月には「伊藤忠が1531億円相当の減損損失の認識を意図的に回避し、2015年3月期の当期純利益を過大報告したと考えている」という42ページ(日本語版は44ページ)にわたる調査レポートを公表した。
 それにより伊藤忠の株価は一時、年初来安値を更新した。

 このように下がりそうな銘柄を見つけるのがチェイノス氏のキモだが、全体が好調の場面では下がるところも少ないので、空売り狙いは困難になる。
 さらにチェイノス氏本人が「ほとんどの人は、物事がマイナスに働くことを好む環境ではうまく仕事をすることができない」と言っているように、人間の性質として、悪くなることを期待して動くというのは大変なことだ。

 不正を行ったとした伊藤忠も、チェイノス氏の予想を覆し2017年3月決算では最高益を達成している。

 なお、チェイノス氏の空売りではなく一般的な動きをするファンドは好成績だ。ブルームバーグによると、買いポジションを持ち、幅広い資産に投資する同氏のヘッジファンド2本は、ヘッジファンドの平均値を上回る運用成績をあげている。
 旗艦ファンド「グローバル・キャピタル・パートナーズ」は年初から9月まででプラス15.2%、「キャピタル・パートナーズ」はプラス18.2%となっている。

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