ガンダムが30年ヒットした秘密2(富野由悠季監督)

100年ヒットする? ガンダム

 ガンダムの主人公アムロ。ガンダムを操縦する少年だが、常識的に考えれば、厳しい訓練を積んでいるわけでもない年端も行かぬ少年が操ることは不可能だ。それを可能にするからこそ「ニュータイプ」という定義になっている。実は、この言葉の意味は、富野氏でさえもわからなかった。

 「ガンダムを、子どもがなぜ見た瞬間に操縦できるか、ということについては、超能力者という設定にしました。ただ、超能力者という概念はSFの世界ですでに使い古されていたので、主人公アムロは、ニュータイプという設定にしました。このニュータイプという定義付けがとても難しくて当時はできませんでしたが、最近ようやくできるようになりました」

 富野氏も最近、お台場の巨大ガンダムを自身の目で見る機会があったのだという。「単なる兵器の姿ではない」と感じたようだ。ガンダムプロジェクトは、緑による都市再生がテーマ。30年前には、国家間戦争の兵器として誕生したはずのガンダムだが、今や平和のシンボル的な存在でさえもある。

 「我々は今環境問題、エネルギーが少ない地球というものに直面しています。現在までの人類の能力論や経済論だけでは、1000年という時間を我々は地球で暮らせないわけです。そういう問題がわかってきた時に、日本人でも人類が生きのびるためには、ニュータイプにならなければならないのではないかという考え方を持つ人が出るようになってきました。30年前のアムロが、ようやくここで定義しつつあります。我々は現在以上の能力を持てる可能性にチャレンジしなければいけません。アムロはガンダムしか操縦できませんでしたが、我々はエネルギーがなくなった地球でも1万年生きのびることができるかもしれない。人にはそういう可能性はあるのではないかというシンボルにニュータイプはなりうるのではないか、ということです」

 時代が求める姿に形を変えてきたガンダム。富野氏は同世代の宮崎駿氏と自身を対比して、次のようなことを述べた。

 「宮崎駿監督は作家として作品論を言っていますが、ガンダムは作品として完結していないのです、ガンダムはコンセプトしか定義していなくて、実を言うと作品になりきっていないのです。そういう意味で僕は宮崎監督に負けたという敗北感を持っているのですが、根本的に宮崎さんのお話している作品論とガンダムは寄り添っていません」

 ガンダムは作品の中だけで生きるものではない。コンセプトとして、みんなが求める姿に進化を遂げながら今後も生き続けていく。だからこそ、ロングヒットになりえたのだろう。(終わり)


1/1スケールガンダム(東京・港区)

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