限られた時間の中で最大の成果を出すコミュニケーション
モーガン・ニール氏
「まず、基本的なことですがどんな場合も、きちんと相手の目を見て話すこと。次に『オープンエンドクエスチョン』です。これはイエスかノーで答えられる質問はなるべく避けて、誰が、いつ、どこで、どうしてなどの疑問符を使って質問をしていくテクニックです。イエスかノーで答えられる質問では、そこから話が展開していきません。自分の知らない相手の情報を引き出し、話を広げていく糸口を見つけるために有効な手段です。」
―相手によっては、話を引き出しにくい場合もあるのではないですか?
「もちろん、すぐに打ち解けてくれる人もいれば、打ち解けるのが難しい人もいます。それはだいたい最初の質問をした瞬間にわかりますね。打ち解けるのが難しい人に対しては、質問の順番を変えたりします。予めこういう順番でいこう、と質問の順番は考えてありますが、相手が答えやすいだろう質問を先に持ってくるのです。まず人間関係をウォームアップしてから、核心の質問へと導いていきます。でも時間は限られていますし、その中でいかにベストな答えを引き出すかという戦いですから、ウォームアップにあまり時間を割くことはできません。常にバランスを見つつ、相手が心地よく話せる状態にもっていくことが大切です。」
―各国で取材していると言葉が通じない、文化が異なるなど、コミュニケーション上の障害も多いと思いますが。
「言葉がわからない時や通訳の人を通す時は、相手のボディーランゲージを見ます。すると、その人の精神状態がすごくよくわかるんです。これはジャーナリスト、インタビュアーなら誰もが感じていることだと思いますよ。」
―コミュニケーションテクニックは、経験を積めば上達していくものですか?
「もちろん、経験を積むに従って、インタビューテクニックは上達していきます。しかしジャーナリストは、絶対に『これでマスターしました』ということはありえない世界です。これは70代のジャーナリストの方が言っていたことですが。自分が日々経験したことを自分の感性を通して伝えていく仕事で、自分が完成する日など来ないのですから、マスターしたという瞬間もあり得ないわけです。私も駆け出しの新聞記者のころは、ひどいインタビューをたくさんしてしまいました(笑)。」
ニール氏と隈研吾氏