仕組債とは?ハイリスクハイリターンな債券
仕組債とは、文字通り特別な仕組みを持つ債券です。仕組債は、債券にデリバティブを組み合わせているのが特徴です。
デリバティブとは金融派生商品のことで、先物取引やオプション取引、スワップ取引がデリバティブに該当します。先物取引とは将来の売買を約束する取引のことで、先物取引を利用することにより、原油先物価格などに連動した仕組債を作れます。
国債や普通社債などの債券はローリスク・ローリターンですが、仕組債はハイリスク・ハイリターンの債券に該当します。
なお、仕組債とは何かを知るには、ノックインやノックアウトなどの仕組みやカラクリを理解することが不可欠ですが、ノックインやノックアウトの仕組みは後で詳しく説明します。
スワップ
スワップ取引とは金利や通貨を交換する取引のことです。スワップ取引を組み込むことで、金利スワップなどに連動する仕組債を作れます。スワップ取引組込み型の仕組債としては、リバースフローター債やフィックスフローター債、ステップアップ債などがあります。
スワップ取引組込み型の仕組債は、市場金利の変動などによって大きな利益を出せる可能性があります。なお、スワップハウスとは、デリバティブ取引を活発に行っている金融機関を指します。
オプション
オプション取引とは、あらかじめ決めておいた期日に、あらかじめ決めておいた価格で資産を売買する権利を取引することを指します。オプションとは「権利」のことで、オプション取引を簡単に説明すると権利を売買する取引のことです。
あらかじめ決めておいた期日に、あらかじめ決めておいた価格で買う権利のことをコールオプションといい、売る権利のことをプットオプションといいます。オプション取引を組み込むことで、一般的な債券以上のクーポン(利息)が得られる仕組債を作れます。
仕組債の種類
仕組債は債券にいろいろなデリバティブを組み合わせた金融商品ですが、大きく分けるとEB債とリンク債の2種類があります。どちらも一般的な債券とは異なる値動きをして、高い利回りで運用できます。それでは、EB債とリンク債について見ていきましょう。
EB債
EB債(イービー債)とは「他社株転換可能債券」のことで、株価の変動によっては満期日に他社の株式に転換される可能性があることが特徴です。一般的な債券は満期日になると償還金を受け取れますが、EB債は預入金ではなく株式で償還される可能性があります。
株価の変動幅が大きいと、償還される株式の価格が投資金を大きく下回るリスクがあり、大損することがあります。しかし、一般的な債券と比べると高利回りであり、運用に成功すると大きなリターンが得られます。
リンク債(株価指数連動)
リンク債とは、株価指数などに連動して償還金額や利率が変動する債券のことです。株価指数があらかじめ決められた水準(ノックイン価格)を償還時に下回らなければ高い利率が適用され、一般的な債券よりも高利回りで運用ができます。
しかし、株価指数があらかじめ決められた水準を下回ると低い利率が適用され、償還金額が額面を下回るリスクがあります。リンク債はEB債と同様にハイリスク・ハイリターンであり、高いリスクを許容できると資産を大きく増やせる可能性があります。
仕組債のノックイン・ノックアウトの仕組みやカラクリ
それでは次に、仕組債のノックイン・ノックアウトの仕組みやカラクリについて説明します。ノックイン・ノックアウトの仕組みやカラクリを理解できると、仕組債がどういった状態になると償還されるのかがわかるようになります。
ノックイン
ノックインとは、株価指数などがあらかじめ決められた水準(ノックイン価格)を下回ることを指します。償還時にノックインすると株価指数などに連動して償還価額が下がります。
運用期間中にノックインすることを「ノックイン事由」といい、その後に基準の価格まで価格が上昇しないと損失が発生することがあります。仕組債は償還時にノックインしていなければ元本割れの心配はなく、一般的な債券よりも高利回りで資産運用ができます。
ノックアウト
ノックアウトとは、株価指数などがあらかじめ決められた水準(ノックイン価格)を上回ることを指します。ノックアウトすると満期を迎える前に早期償還ができ、通常よりも早く現金を受け取れます。
EB債の場合はノックアウト価格を超えると額面金額とクーポンが現金で償還され、他社の株式で償還されることはありません。リンク債もEB債と同様に額面金額とクーポンが現金で償還されます。
仕組債のメリット
一般的な債券より期待利回りが高い
仕組債は、一般的な国債や社債と比較して期待利回りが高いことがメリットです。ただし、仕組債はノックイン事由を起こすと大きな損失が発生することがあり、必ずしも高利回りが期待できるとは言えません。
仕組債は運用に成功すると2~3%以上の高利回りで資産運用ができます。日本国債の利回りは0.05%程度、普通社債の利回りは1%程度なので、一般的な債券と比べると2~30倍以上の高利回りになります。リスクを許容できるのであれば一般的な債券よりも有利です。
オーダーメイドで購入できる
仕組債はオーダーメイドで購入できることもメリットになります。仕組債は債券にデリバティブを組み合わせた金融商品なので、運用目的に合わせて最適なデリバティブを組み合わせることが可能です。
デリバティブの組み合わせ方によっては、高い利回りが期待できる独自の債券を作ることができ、大きな利益を出せる可能性があります。ただし、オーダーメイドの仕組債は流動性が低く、売りたくてもなかなか買い手がつかないことがあるので注意が必要です。
さらに、他の債券についても詳しく知りたい方は、以下のリンク先のページをご覧ください。
仕組債 | 劣後債 | ハイイールド債 |
EB債 |
仕組債のリスクやデメリット
価格変動リスクが大きい
仕組債のリスクやデメリットとして、価格変動リスクが大きいことが挙げられます。価格変動リスクは他の金融商品にも存在しますが、仕組債は価格が変動してノックイン事由が発生すると大きな損失が出る可能性があります。
また、仕組債にはクーポン減少リスクや利率変動リスクがあり、ノックイン事由が発生すると低い利率が適用される場合があります。仕組債はノックイン事由が発生しなければ高利回りで運用できますが、利率が低くなる恐れがあることは知っておきましょう。
仕組債を購入する際は、利率の高さだけに着目するのは禁物です。事前に相場の状態を確認しておき、ノックイン事由が発生しないと判断できれば購入すると良いでしょう。
償還されない可能性がある
仕組債は他の債券と同様に信用リスクがあり、発行体企業が経営破綻すると元本が償還されない可能性があります。信用リスクを低下させるには、仕組債を購入する際に発行体企業の信用力を確認しておくことが大切です。
また、仕組債は債券にデリバティブを組み込むため、デリバティブ取引の相手方が破綻することに契約が履行されない「カウンターパーティーリスク」が存在します。カウンターパーティーリスクは、他の債券にはない仕組債に特有のリスクになります。
資産運用計画を立てにくい
仕組債は、資産運用計画を立てにくいという側面があります。その理由は、仕組債は早期償還条項に該当すると償還されてしまうことがあるからです。早期償還されると資産運用計画通りに資産運用ができず、資産形成に支障が出ることがあります。
ノックアウト価格を超えると早期償還されても利益が出ますが、満期まで運用すれば得られる予定だった利益は受け取れなくなってしまいます。そのため仕組債は、資産運用計画に則って計画通りに資産運用をしたい方には不向きです。
途中売却をしにくい
仕組債は、流動性が低く途中売却がしにくいというリスクが存在します。債券は他の金融商品と比べると流動性が低いですが、債券にデリバティブを組み込んだ仕組債は他の債券よりも流動性リスクが高くなります。
流動性が低いと、償還日前の途中で売却したい場合でも買い手がなかなかつかず、買い手が見つかるまでに時間がかかってしまいます。すぐに現金が必要になった場合などは困ったことになるので、生活資金で仕組債を購入するのは避けましょう。
仕組債の”やばい”トラブルが相次いでいる?
仕組債をめぐってはトラブルが相次いでいます。債券にデリバティブを組み込んだ仕組債は他の金融商品よりも仕組みが複雑であり、仕組みやカラクリを理解するのに時間がかかります。
特にノックインやノックアウトについての理解が不足していると、想定していたよりも多大な損失が発生する場合があります。
ノックインやノックアウトの仕組みは、投資経験の豊富な投資家でも理解しきれないことがあるほどで、素人の投資家にとってはなおさら理解が難しいでしょう。
また、仕組債の募集広告では利回りの高さだけが強調されており、リスクについては小さな文字で書いていることが多いです。仕組債のトラブルを防ぐには、利回りの高さだけでなく、さまざまなリスクがあることを知っておくことが大切です。
仕組債は個人投資家にはあまりおすすめしない
仕組債は個人投資家にはあまり向いていません。その理由は、仕組債の複雑な仕組みを正確に理解することが難しいからです。あなたの大切な資産を、仕組みが理解できない商品に投資するのはリスクが高いと言えます。
また、デリバティブを組み込んでいることでハイリスク・ハイリターンになり、大きな利益が出せる可能性がある反面、想定されるリスクも高くなります。
デリバティブ取引で資産を大きく増やしたい個人投資家に方には、投資のプロであるファンドマネージャーが運用を担当する金融商品が向いています。
仕組債以外の資産運用を検討したい方は?
ここまで見てきた通り、仕組債は通常の債券よりも高利回りを期待できる反面、さまざまなリスクがあります。特にノックインやノックアウトなど、仕組債特有の条件もあり、それぞれの仕組みを理解していないと思わぬ損失を被るケースもあるでしょう。
仕組債以外での資産運用を検討したい方は、ぜひヘッジファンドダイレクトにご相談ください。ヘッジファンドダイレクトでは、長期的に運用実績のある優良ヘッジファンドを紹介しているので、仕組債以外での資産運用をしたいお客様のニーズを満たしてくれるでしょう。