経営者必見!世界一の部下の育て方【イチロー編】

トップ就任のタイミング

 土井氏は93年限り、契約途中でチームを去った。その後を受けて監督に就いたのはイチロー選手も師と仰ぐ存在の仰木彬氏だった。仰木氏は人望があるために多くの選手たちや関係者から慕われている。そしてオリックスは仰木監督の下で95、96年と2連覇を果たしてもいる。

 この両者は相性が合ったということもあるだろう。イチローが活き活きとプレーしているようにも見えた人も多いはず。そこで「イチローの才能を見出した」「名監督」という評価が仰木氏に与えられるようになった。

 だが、もしも土井、仰木両氏の監督在任時期が逆であれば、どうだっただろうか? もちろん、そんなことは検討もつかない。勝負の世界に「IF」は当然ない。それで今のイチロー選手があっただろうか、ということさえもわからない。

 だが、当のイチロー選手は、土井氏が自分の才能を見抜いていてくれたことは十分承知していたようだ。当時はまだ高校球児のようなあどけなさが残っていたイチロー選手。プライドが高いだけに、2軍に落ちてそれまで以上に野球に真摯に取り組んだことは想像に難くない。

 「おいしいところ」。誰もが欲しい。しかし、敢えて試練を与えたトップのことは、部下もいつかはわかってくれるはずだ。また、万人に評価される時も必ず来るはずだ。

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