2億7000万円の口止め料?
5月12日、横浜地裁に地位保全の仮処分申請を行った富士通元社長の野副州旦氏。6月に行われる富士通の株主総会までに復帰し、「コンプライアンスを遵守する組織を立て直したい」とした。昨年9月に辞任する際には、富士通からは相談役としての身分と10年で2億7000万円の報酬を約束された。しかし、一転して、辞任の理由は「体調」ではなく「反社会勢力との付き合いを疑われた」ためであるとした。「会社に迷惑をかけるなら」と辞任したが、それは会社に仕組まれたものだったとして、富士通という大企業と戦うことを決意した。元社長が、会社を相手に戦う理由、真相を東京都内で会見し語った。
◆以下野副氏の話
まず、わたしが辞任に至った経緯をご説明します。2009年9月25日、午前9時から取締役会が開かれる予定だったのですが、私は8時30分に特定のメンバーに呼ばれました。
メンバーは次の6人でした。大浦溥社外取締役、秋草直之取締役相談役、間塚道義会長、山本卓眞顧問、安井三也法務本部長、山室惠監査役で、特に山室監査役は著名な元刑事裁判官です。
この山室社外監査役から尋問が始まるという形でこの会議が始まりました。この監査役と社外取締役たちは、私と付き合いがあった人物の後ろにファンドがあって、「そのファンドが反社会的勢力とのつながりがある」と断定しました。そして、「このことが明るみに出ると、富士通が上場廃止になる。金融機関が引き上げて倒産するリスクさえありうる」としました。具体的な指摘の例として「警視庁の情報では、このファンドは○○組と関係している」と言われました。
「不祥事で社長が辞任したということは公表したくない、あくまで辞任の理由は病気とする」「この話を偽装と思われないようにしばらく入院してほしい」「今後、相談役として10年間で約2億7000万円の支払いを行う」「このことはすでに取締役会の総意であり、取締役会で承認された中身なので、もし辞任しなければ、その後の取締役会で解任される」という内容でした。
その時に私は、そんなに大変な社会的リスクが潜んでいるとすれば、なぜ9月25日まで教えてもらえなかったのかと思いました。しかし、会社の立派な先輩たちがそういった作り話をしているとはまったく思わず、私だけが知らないことだったのか。会社のために自分は辞任するしかないとパニック状態で受け入れてしまいました。