山内氏のおかげで国立大学では突出した設備に
山内氏の寄付で建設された「積貞棟(せきていとう)」は、がん治療の専門棟。地上8階、地下1階、延べ床面積約2万平方メートル、294床。菌の繁殖を防ぐ最新の調理システムもそなえ、国立大学法人の病院として、突出した設備になった。「5月29日から関係科の移転が始まり、12月には最終の移転が完了します」と病院関係者は説明する。
高さは31メートル。付近の規制である20メートルを大幅に超えて建設が認められたことも話題のひとつ。当初、この病棟は平成20年の完成が目標だったが、京都市の新しい高さ規制は19年に始まったため、例外を認めてもらうための手続きが必要だったことから、時間がかかった。
山内氏が寄付を思いついたのは、自身が目の治療で京大病院に入院したことがきっかけだ。病棟群の老朽化がはげしいことを目にし、建て替え計画が進んでいることを耳にし、自ら申し出た。
寄付を発表したのは18年2月。当初の寄付予定額は70億円だった。「予定より5億円多くなったが、全額をご寄付いただきました」(病院関係者)という。完成が遅れたことから、高齢の山内氏は「生きているうちに間に合うだろうか」と心配したが、5月18日に行われた記念式典にも出席し、「テープカットに来ることができてよかった」と話したという。