相続税対策の切り札「無利子国債」とは

政府お墨付きの合法的な節税対策

 では、“眠らせておくのはもったいない”相続税の非課税資産というのは、実際にはどのくらいあるのだろうか。熊野氏の試算によれば、実際に相続税を支払っている被相続人の割合は死亡者数の4.2%に過ぎないが、そのわずか4%強の人々の保有資産規模はかなり大きい。入手できる家計金融資産の分布から計算すると、上位4.2%が日本の全金融資産の29.2%を保有する。

 家計の純金融資産(負債を控除)の中で現金や年金運用分を除いた金額に29.2%を乗じると、相続税の課税が予想される人々の保有する純金融資産は242兆円と推定できる。仮に大口資産家が別途保有する実物資産などをすでに非課税枠いっぱいに持っていて、金融資産全体が課税対象になるという前提を置けば、この242兆円が無利子国債の消化余地ということになる。

 「年間1兆5000億円の範囲の税収を犠牲にして、最大242兆円の無利子国債が消化できるのならば、その経済効果は決して小さくない。将来の税収を見合いにして国債消化を進めようという検討案は、今後、さらなる応用、展開をみせる可能性がある」(熊野氏)。

 「金持ち優遇」批判は日本のマスコミのお家芸だが、高額所得者の退蔵資金を引き出して社会保障支出に充てるなど上手く活用するなら、その需要拡大効果は国民全体に大きな利益と幸福をもたらす。富裕層にとってみれば、いわば政府お墨付きの合法的な節税対策。消費税の議論が迷走すればするほど、日本の財政が火の車になればなるほど、「無利子国債」の発行が現実味を帯びてくる。

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