「こうすれば会社は潰れる」(板倉雄一郎氏)

スピードの解釈を間違えてはいけない


板倉雄一郎氏
 「世界初」のインターネット広告表示システムにサービス開始を目指した板倉氏率いるハイパーネット。今だからこそ、事を急ぎすぎた、と笑って冷静に語ることができる。スピードを重視した結果の失敗なのだが、経営には常にスピードが必要となるが、その「スピード」とは実はどんな意味なのだろうか? 

 以下板倉氏)時間も大切になってきます。今だからこそ言えるのですが、席巻してシェアを獲得するまでの時間が速いことが重要であって、決してスタートアップの早さが重要ではないんですね。「速さ」と「早さ」の違いです。

 つまり最終的に圧倒的なシェアを取れればいいのに、僕は世界初のリリースにこだわりすぎたのです。1996年に(事業が)スタートして、潰れたのは97年です。その約3年後にネットバブルが起きているんですね。特許でも取って、2、3年ボケッとしていた方が良かったかもしれないなぁ、と今でこそ思うこともありますけどね。

 ただ当時は、一番保守的だと思っていた株主をはじめ利害関係者がみんな、「すごいシステムだから早くやろう」と言ったんです。当時は僕も若かったし、周りがみんなそう言うものだからと急いだわけです。今だからこそ、わかることですけどね。

 「経営のスピード」と経営者の方はよく言うのですが、みなさんわかっていないと思います。大切なのは、いい波が来たときに乗れるかどうか。でも、いい波というのは近くに来るほど断定しやすくなるので、「イケる」と思ったその時に、いかに判断して乗る態勢を整えることができるかが大事なんです。つまり、決定してから実行できるまでのスピード(早さではなく速さ)が大事だということです。

 飛行機に例えると普通は十分に整備をして加速して離陸しますが、でも僕は、整備もこのくらいでいいや、ガソリンなんて半分でいいや、という具合に加速もなく出発しました。離陸そのものを急いだからです。それでは、エンジンが常に最大出力じゃないと失速してしまいますよね。

 いい波が読める人はいません。そのためには、波が来たときのために、いつでも参戦できる用意をしておくということが大事になります。

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