「開成番長」が語る、ギャンブル漬け人生【5】  

 東京都杉並区にある個別指導塾TESTEA塾長の繁田和貴氏は、東大を目指す 「男子御三家」のひとつ開成中学・高校から東大へ進学というエリートコースを歩む一方で、ギャンブル漬けの生活を送り、開成の異端児『開成番長』として名を馳せた破天荒な人物でした。

「開成番長の勉強術」「開成番長の記憶術」(共に白夜書房)などの著書があり、若きカリスマ講師として受験界で注目を浴びる繁田氏に、波乱万丈な人生や教育論などについて伺いました。


開成中合格発表時の繁田和貴さん(右) 、妹の美貴さん(前列)と友人2人
 塾を始めるきっかけの一つとなったのが、「中学・高校・大学に受かること」が終点ではないという思いです。自分の経験から、受験で燃え尽きてしまわないよう、合格したその先、例えば将来の仕事のことについてまで受験勉強をする過程で考えていくことが必要だという思いがありました。

 今でこそ私立校ではキャリア教育的なものも見受けられますが、当時は開成も含めほとんどそういう授業はありませんでした。人生という大きな視点で考え行動を促す環境が、今の日本の小・中・高には整備されていません。自分の苦い経験から、それを含めて教えるべきだという考えに至り、受験勉強だけでなく「人間力」も鍛えていくことを塾の理念としています。もちろん「人間力を鍛えましょう」だけでは親御さんも不安になるでしょうから、入口として勉強の成績を伸ばすことが基本になります。でも勉強にしっかり取り組む姿勢も、人間力が育つからこそ作れるのです。

 「人間力」というと少し抽象的な表現になりますが、要は自立した一人の人間「自立型人間」として社会の中で生き抜く力のことです。これは若いうちに絶対に学んでおくべき力で、受験勉強をやる過程の中でも鍛えることができます。

 自立型人間になるために、まず大切なのは「目的意識」を持つことです。「なんのために」合格したいのか、「なぜ」テストでいい点を取りたいのか。そういった目的意識の有無で勉強に発揮できるパワーも違いますし、合格したその先の行動力も違ってきます。自分自身はたいした目的意識も持たずに東大に入ってしまったから、せっかくの素晴らしい環境をまるで活かすことができず、気がつけばパチスロ三昧の生活、東大に入らなくてもできることにどっぷりの毎日でした。

 でもはっきりとした目的意識を持つと、行動がブレないし未来に自分がなりたい像に向かって突き進むことができる。この「目的意識」は言いかえれば「思い」や「志」ともいえるのですが、それをしっかり持っている人間は強いです。計画性も芽生え、有意義な行動に時間を割くことができるようになるのです。こういった思いや志は、本当の意味で充実した人生を送るためには欠かせないものだと思うようになりました。

 塾を始めてから、講師やスタッフとして関わる何人ものアクティブな学生と接する中で、自分の学生生活を心から反省しました。彼らはみんな何らかの思いを持ってイキイキ行動し、学生生活を謳歌している。そして就職活動でも、名だたる一流企業から内定を勝ち取っていきます。もちろん内定したその先には、当然やりたいことを思い描いています。大きな思いや高い志を持っているのです。だからこそエネルギッシュに毎日を過ごせているのでしょう。そういう思いがないと、何か大きいことを成し遂げるのは難しいのではないでしょうか。

 僕も塾の仕事を始めるにあたり、「自分の経験から子どもたちに教えなくてはいけないことがある」という思いを漠然とでも持つことができたからこそ、苦しい時にもめげずに今こうして続けられているのだと思います。その思いを概念的な言葉で表現したものが「人間力教育」なのです。TESTEAのイキイキとした講師たちと接する中で、成績アップはもちろんですがそれ以上の「生きる力」のようなものをつかみ取ってくれることが、教育者として最高の喜びですね。

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