AKB48卒業翌日に社長になった川崎希さん(前篇)

実は「AKB48」で多くを学んでいた


 原宿の美容室でAKB48の募集チラシをもらった。母親に勧められるままにオーディションに行くと合格。世の中は偶然に支配されることもある。元々、学校の成績も良かったが、活動を始めてからは仕事が忙しかったせいか、模試でもA判定の早稲田、青山学院と連続して不合格になった。

 「AKB48⇒社長」という道はすでに偶然が決めた運命となっていたのかもしれない。ただ、起業準備をするにあたっても、相変わらずAKBの仕事は忙しく、手を抜くわけにはいかない。そんな身ながらも、起業準備も抜かりなくやった。しかし、社会人経験はなくても、アイドルをやったことが思いのほか役立ったのだ。

 「ステージに立ったことや、イベントや握手会で初対面の人と話すことで、知らない間に度胸がついていたのかな~なんて思います。メンタルは想像以上に強くなっていましたね。電話したり、営業後はついでに隣の工場にアポなしで行ったりして交渉していましたよ」

 だが、21歳の女の子の話をまともに聞いてくれる人がどれだけいるだろうか。嫌なことも言われたというが、一番キツい質問は「仕事何やってるの?」というものだったそうだ。アイドルではなく「川崎希」という一人の人間として勝負するのが起業。そこで「AKBという名前は絶対に使いたくなかったので、『色々…』という風にごまかしました」という。

 メンバーにも内緒で控えの時間などに経営の本をたくさん読んだが、どれもピンと来なかった。役立ったことは、自分で見たことや聞いたことだった。

 社会人経験こそない川崎さんだが、実に冷静な目を持っていたのだ。

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