偏差値29から東大に合格した美人作家

東大一択だった選択肢


杉山奈津子さん(文京区の東大)
 「選択肢が一つしかなかったのです。東大以外にも選択肢があれば、他に行っていただろうと思います」

 杉山さんは、自身がうつ病だった経験から、学校の保健室で読んだうつ病の本がきっかけで心が楽になったことがあった。だから、東京に行って、自分の経験を基にした本を出すことで同じ病気で苦しんでいる人のためになりたい、と将来の目標を立てていた。

 「東京には出版社がたくさんあるし、とにかく東京に行かなきゃと思いました。それで母に相談したら、『私立はお金がかかるから、じゃあ、国立ね』と言われたんです」

 うつ病の治療に関しての知識をつけるために学部は薬学部のある東京の大学と考えていたが、そこに国立というフィルターをかけると、何と、東大しかなかったのだ。

 高三の秋に受けた模試の成績で、数2Bが29.2だった。前出の漫画「ドラゴン桜」でさえ、作中の生徒たちの偏差値は36だったのに…。東大入試で合否を決めると言われる数学において致命的な状況だ。もちろん、他の教科も29とまではいかないものの、サッパリだった。

 だが、逃げるわけにはいかなかった。後から振り返れば、ここが人生の大きな分岐点となることを杉山さん本人も気がついてはいなかった。

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