【切手を1億円集めた男】(上)

自分の部屋に収まりきらない切手コレクション

 「切手は自分の部屋と他に2部屋、合わせて3部屋に分けて置いています」

 Aさん宅は広いのだが、一部屋に収まりきらないという事実だけで、切手コレクションの凄まじさを語るには十分なくらいだった。もちろん、ここに至るまでには一朝一夕ではなく、相当な時間を要している。切手との出会いは10歳の時、当時を振り返る。

 「小学校5年生の時に、いとこから外国の切手をもらって、そこから何となく集めるようになったんです。ちょうど当時は切手ブームということもあって、周りの友達も集めていましたね」

 現代では信じられないが、少年漫画雑誌に、切手商の広告も毎週のように出ていたくらいだという。だが、ブームはブーム。中学、高校へと進み、周りが脱落していく中でも、Aさんは集め続けていた。

 「とにかくバラエティーがたくさんあって、目打(切手の周りに付いているぎざぎざの部分)によって値段が違ったり、知れば知るほど段々おもしろくなってきたんです。また、趣味誌で他のコレクターと交換したり、コレクションが増えると、また楽しくなったので」

 Aさんの興味は、さらに大学進学後、就職後も尽きることはなかった。だが、一般的にコレクションの世界は資金力がモノを言う。一介の公務員であるAさんが、なぜここまでのレベルに達したのか。

1 2 3 4
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる