コンプレックスを克服して賞金王に
今や、カウボーイハットを被っていない片山選手は想像できない。ただし、ゴルフ界広しといえど、他に被っている選手は見当たらない。ちなみに片山選手が被り始めたのは2000年の途中から。それまでは普通のキャップでプレーしていたことを覚えているファンも多いだろう。あえて変えたのは、ちゃんと秘密があったからだ。その理由とは、コンプレックスを克服するためでもあった。
勝負の世界で生き残り、そして頂点を目指すためには、たとえ、他人から見てどんなに些細なコンプレックスも、時として命取りになりかねない。帽子を早く被っていれば、片山選手はもっと早く賞金王になっていたかもしれない。
「(カウボーイハットは)2000年の夏ごろに知りました。全国のゴルフショップに飾ることになったパネル写真の、自分の笑った顔が大きく見えたんです。元々エラが張っているのに…」
プロゴルファーとは衆目を集める存在。そんなことではプレーに集中できるはずもなく、確実に損をしていたことになる。そこで…。
「視線を上に持っていくことを思いついたんです。それで視覚作用を利用するために渋谷の109に帽子を買いに行きました。それを(契約中の)メーカーに持っていって11月から試合で被るようにしました。そうしたら(2000年の)残り4試合のうち、3試合で優勝できたんですよ。それで初めて賞金王になりました。ものすごい幸運を運んできてくれたので今でも被っています」
そこからの快進撃は言うまでもない。コンプレックスを隠す術を覚えた男はさらに強くなる、ということなのか。最近はさらに「ヒゲでシャドウをかけてますけどね」と念を入れている。今年のマスターズが妙にたくましく見えたのも、それがあるのかもしれない。