奇跡を起こせなかったUBSトレーダー

 スイス金融大手UBSのトレーダーが会社の許可しない不正取引を行い、20億ドル(約1500億円)の損失を出したとして逮捕された。「僕には奇跡が必要だ」。自身のフェースブック上に、意味深長な言葉を犯行発覚前に残していたトレーダー。何を思い不正に走ったのか。

もう奇跡を起こすしか手がなかった31歳の青年

 「I need a miracle」


クウェク・アドボリ容疑者(フェースブックより)
 英国の警察当局はこのたび、詐欺など疑いでUBSトレーダー、クウェク・アドボリ容疑者(31)逮捕した。会社が許可しない取引を行い、損失は2008年から総額20億ドル(約1500億円)に膨れ上がっていた。

 自分のトレードが発覚することを覚悟していたのだろう。巨額の損失穴埋めを何とかするためには、奇跡を起こすしかない金額だった。

 この人の良さそうな顔つきをしたガーナ出身の31歳の青年。フェースブックなどによると、英クエーカーのボーディングスクールに入学し、ノッティンガム大学を03年に卒業し、先輩からUBSでのインターンを勧められ、そのまま入行した。

 当初はミドルオフィス(営業、投資などのサポート部門)に配属され、後にフロントオフィス(営業、投資などを行う収益部門)に異動した。外資系金融のヒエラルキーでは、フロントの方が格上とされ、こうした異動は「皆無ではないが、あまりない」(業界関係者)という。

 いくら、ポジションを守りたくても、3年間も不正を隠しとおすことは可能だったのか、疑問が生じてくる。

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