ハリウッド・ドリームの先にあったもの ― 田村英里子さんインタビュー

ハリウッドで日本人が活躍できないのはなぜ?


青空とパームツリーが似合うロスの街
―アンドウ君のような日本人役を、本当の日本人が演じることは少ないようですが、それは日本人俳優がハリウッドに少ないからでしょうか?
田村:「アメリカでは韓国系アメリカ人も、中国人も、日本人も、アジア人としてひと括りに見られがちです。日本人の私たちもきっと欧米人、例えばイタリア人とフランス人の顔の違いを見分けるのは難しいですよね? それと似ているのでは、と思います。」

―日本人がハリウッドで成功できないのは、語学ができないことが大きいのでしょうか?
田村:「語学は大前提ですが、それだけが大きな理由ではありません。日本に限らず、アメリカ以外の国から来た俳優が成功する例が、とても少ないんです。日本のドラマが日本の市場に向けて作られるように、ハリウッドはアメリカに向けて作品を作っているのですから、当然ですがアメリカのドメスティックな文化を知っている人の方が強い。語学はできて当然で、コミュニケーションが普通にとれてアメリカの文化を理解できて、初めてアメリカ人俳優たちと同じ土俵に立てる。それから演技力の勝負になるので、ハリウッドで成功できる外国人はほんの一握りなんです。日本人が成功できない理由があるとしたら、それはアメリカの文化や習慣、スタンダードを知らないだけだと思います。そういった背景を理解することが一番大事なのだと思います。」

日本の芸能界をやめ、ハリウッドを目指した理由

―田村さんが日本の芸能界をやめて、ハリウッドを目指したのはなぜですか?
田村:「私には日本の芸能界で活動をはじめる前から、いつか世界で活躍したいという夢がありました。小学生の頃、私は父の仕事の関係で旧西ドイツのデュッセルドルフで過ごしていました。その地元の映画館で観た『E.T.』に感動して、それから映画の世界に憧れるようになったんです。また小学校の頃、学校からの帰り道にビルボードのポスターが貼ってあるのを見かけて。アジア人の女の子が何かの飲料を飲んでいるポスターだったんですが、それを見て、私もいつか世界で活躍できる人になりたい!と夢を持つようになりました。アメリカに来たのは、そんな小さい頃からの夢を叶えるためです。アメリカは国土が広くメディアの視聴者も莫大で、とてつもない影響力があります。またアメリカで作られたものは国内だけじゃなく、世界中に発信されますし。」

―グローバルな影響力を持てるようになりたくてアメリカに、ということでしょうか?
田村:「いえ、当時はそんなこと全く考えてなかったですね(笑)。私は単純に『好きなことで、世界で活躍できるようになりたい』という漠然とした夢を持ってアメリカに来たんです。でも、本当にここまでくるのに時間がかかりました。意外に、ハリウッドの壁は想像以上に厚かったと感じています。渡米してから7年後、やっとチャンスに、『HEROES』という作品に出会えました。その時に、初めて私の前でドアが開いたんです。」


17世紀の日本を舞台とした『HEROES』シーズン2の撮影現場

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