フォーブスによる米国の長者番付の中から、米ヘッジファンド業界の長者番付が明らかになった。二度の離婚を乗り越えて業界の盟主となったケネス・グリフィン氏(46)が、70億ドルで8位に入り、1兆円は目前となった。また、久々の新たな顔ぶれとして、17位にともに45歳、資産28億ドルの2人が現れた。
すでに引退してファミリーオフィスのみの資産運用を行うジョージ・ソロス氏が長年の蓄積により、資産245億ドルで変わらず1位で、四天王中3人がアラエイティーとなる。上位十傑で唯一の40代であるケネス・グリフィン氏が8位にランクインしたが、今年は業界の報酬ランキングで初の1位の座を射止め、また、NYのコンドミニアムの個人取引市場では史上最高額の2億ドルでコンドを購入し、加えて業界最高額となる72億円の年間賃料となるオフィスをレンタルし、業界一バブリーな男でもある。資産は昨年の55億ドルから70億ドルに増加し、大台の1兆円超えは目前となっている。
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◆米ヘッジファンドマネージャー資産額ランキング(氏名、年齢、資産額、社名)
1※ ジョージ・ソロス(85) 245億ドル ソロスファンド・マネジメント
2 カール・アイカーン(79) 205億ドル アイカーンキャピタル・マネジメント
3 レイモンド・ダリオ(66) 153億ドル ブリッジウォーター・アソシエイツ
4※ ジェームズ・シモンズ(77) 140億ドル ルネサンス・テクノロジーズ
5 スティーブ・コーエン(59) 120億ドル ポイント72アセット・マネジメント
6 デビッド・テッパー(58) 116億ドル アパルーサ・マネジメント
7 ジョン・ポールソン(59) 114億ドル ポールソン&カンパニー
8 ケネス・グリフィン(46) 70億ドル シタデル・インベストメント
9 ブルース・コブナー(72) 53億ドル カクストン
10 イスラエル・イングランダー(67) 48億ドル ミレニアム・マネジメント
※は現役引退(ファミリーオフィスなどでの運用)
グリフィン氏は、大富豪にとっては資産減少の最大の危機である二度の離婚を乗り越えて、資産を守っている。同じくヘッジファンド運用会社アラゴン・グローバルの創業者であるディアス夫人から離婚を通告されたのは、昨年夏の長期休暇中。子供3人を連れて旅行中だった夫人の代理人からその知らせが来たというが、プレナップ(婚前契約)に色を付けて3500万ドル、さらには3人の子供の養育費として月額1億円程度が支給される模様だ。
一度目の離婚で学んだのか? 財産分与の割合を1%にした上に夫人は泣く泣くサインさせられたという証言も出ているが。離婚の調停・訴訟で数々の不動産を持つ不動産マニアであることも明らかになったが、とにかく、あらゆる資産を守った。これからは本拠地のシカゴに加えて新たな拠点を築いたNYで、新たな伝説構築にまい進する。
10位までは、ほとんど業界のトップ運用者が並んでおり、ほぼ例年と変わりない顔ぶれとなった。ただ、ベスト20まで広げると新たな顔ぶれがあることに気づく。
11 ポール・チューダー・ジョーンズ(61) 47億ドル チューダー・インベストメント
11 デビッド・ショー(63) 47億ドル DEショー&カンパニー
13※ スタンレー・ドラッケンミラー(62) 44億ドル デュケーヌキャピタル
14※ ジュリアン・ロバートソン(83) 37億ドル タイガーマネジメント
15 ダニエル・オク(54) 35億ドル オクジフ・キャピタル
16 レオン・クーパーマン(72) 34億ドル オメガ・アドバイザーズ
17※ ジョン・アーノルド(41) 28億ドル ケンタウルス・エナジー
17 ジョン・オーバーデック(45) 28億ドル 2シグマ・インベストメント
17 デビッド・シーゲル(45) 28億ドル 2シグマ・インベストメント
20 エディー・ランパート(52) 27億ドル ESL・インベストメント
17位に並ぶジョン・オーバーデック、デビッド・シーゲルの2氏だ。2001年に設立された2シグマ・インベストメントだが、これまでに名前が出ることはさほどなかった。2人とも大手運用会社DEショー出身で、数学の研究、さらにはクオンツ運用で実績を持ち、キャリアは長い。
注目されたのは昨年の末で、同社のエンハンスド・コンパスファンドの2014年の年率リターンが57.55%となってからだ。同社の他のファンドも軒並み2ケタ以上の実績を残した。運用資産総額も現在は250億ドルだが、2011年11月の80億ドルが2014年7月に200億ドル、2014年10月には230億ドルと最近5年間の伸びが大きく、公的年金やSWFなどの大型資金が入るようになったという。
同社は、データセンターで独自の投資環境や技術開発の研究を行っており、企業の発表、幹部の売買や機関投資家の売買、天候、それらに加えてツイッターなどSNSも合わせてデータと相場の動きを分析し、運用モデルの開発を行っている。同社ホームページは従来のヘッジファンド運用会社らしからぬ米西海岸のIT企業のような雰囲気を漂わせる。これまでノーマークだったのは、専門誌などの報酬ランキングで2人の報酬を補足しきれていなかったのではないか。今後、クオンツ系の新星として注目を集めるだろう。
21 ダニエル・ローブ(53) 27億ドル サードポイント・キャピタル
22 ビル・アックマン(49) 26億ドル パーシング・スクエア・マネージメント
23 ジェームズ・ディナン(56) 24億ドル ヨーク・キャピタル
23 ステファン・マンデル(59) 24億ドル ローンパイン・キャピタル
25 ノーム・ゴッツマン(54) 23億ドル GLGパートナーズ
25 ラリー・ロビンス(45) 23億ドル グレンビュー・キャピタル
27 チェース・コールマン(40) 22億ドル タイガーグローバル
28 ポール・ジンガー(70) 21億ドル エリオット・マネージメント
29 グレン・ダブリン(58) 20億ドル ハイブリッジ・キャピタル
30 ネルソン・ペルツ(73) 19億ドル トライアンファンド・マネジメント
30 マーク・ラズリー(55) 19億ドル アベニュー・キャピタル
21~30位は、チェース・コールマン氏、ラリー・ロビンス氏ら有望なネクストジェネレーションが混じっており、日本でも著名なサードポイントのダニエル・ローブ氏も21位に入っている。