ハイイールド債とは何かわかりやすく解説
ハイイールド債とは利回りが高い債券のことで、ジャンク債とも呼ばれます。債券には国が発行する国債や企業が発行する社債などがあり、ハイイールド債は社債に該当します。
社債の利回りは、発行体企業の信用力によって決まります。信用力が相対的に高い社債を投資適格社債と言い、投資適格社債は安全性は高いですが利回りは低いです。
これに対し、ハイイールド債は信用力が投資適格社債よりも低く、デフォルトを起こすリスクがあります。しかし投資適格社債と比べると利回りは高く、デフォルトを起こさなければ投資適格社債よりも大きな利益が得られます。
ハイ・イールド債とは、利回りが高く信用格付が低い債券のことで、ジャンク債などともいわれます。イールド(yield)とは、直訳すると、収益、利回りという意味となります。
投資適格社債とハイイールド債の線引きは、S&P社やMoody’s社などの格付会社が発表する信用格付(投資適格格付)によって決まります。信用格付がBBB(トリプルビー)以上であれば投資適格社債になり、BB(ダブルビー)以下だとハイイールド債になります。
債券の種類 | S&P社 | Moody’s社 |
---|---|---|
投資適格格付(信用力高い) | AAA | Aaa |
AA | Aa | |
A | A | |
BBB | Baa | |
ハイイールド債(信用力低い) | BB | Ba |
B | B | |
CCC | Caa | |
CC | Ca | |
C | C | |
D | ー |
なお、国債利回りと社債利回りの差のことを「社債スプレッド」といいます。社債スプレッドを確認することで、社債の利回りの相対的な高さがわかります。
米国のハイイールド債の利回りやスプレッドはどのくらい?
米国のハイイールド債の利回りやスプレッドは以下のようになります。なお、利回りやスプレッドの数値は2021年5月14日時点でのアメリカの大手総合情報サイト「Bloomberg(ブルームバーグ)」のデータを元にしています。
銘柄 | 利回り | スプレッド |
---|---|---|
米国10年国債指数 | 1.63% | ー |
米国ハイイールド債指数 | 4.18% | 2.55% |
BB格債インデックス | 3.37% | 1.74% |
B格債インデックス | 4.46% | 2.82% |
CCC格債インデックス | 7.03% | 5.40% |
米国10年国債指数(利回り1.63%)は、ハイイールド債の利回りを比較するための基準として使用されます。米国ハイイールド債指数(利回り4.18%)のスプレッドは2.55%なので、ハイイールド債は米国債よりも2.55%利回りが高いことがわかります。
スプレッド(国債と社債の利回りの差)=4.18%-1.63%=2.55%
ハイイールド債の利回りは信用格付によって決まり、信用格付が低くなるほど利回りは高くなります。BB(トリプルビー)→B(シングルビー)→CCC(トリプルシー)の順で信用力が低くなるので、ハイイールド債の中ではCCC格債が最も高利回りです。
参考:野村アセットマネジメント
ハイイールド債のメリット
ハイイールド債は以下のようなメリットがあります。
国債よりも高利回りでの運用が期待できる
ハイイールド債は、国債よりも高利回りでの運用が期待できることが大きなメリットです。先ほど紹介した表でも、国債の利回りが1.63%、ハイイールド債の利回りが4.18%、スプレッドが2.55%なので、ハイイールド債の方が国債よりも2.55%利回りが高いです。
ハイリスクになりますが、CCC格債インデックスの利回りは7.03%でスプレッドは5.40%もあり、運用中に発行体企業がデフォルトしなければ大きな収益が得られます。
1,000万円の資金で米国債とCCC格債を運用した場合、1年間の運用益は米国債が16万3,000円、CCC格債は70万3,000円で、ハイイールド債の方が54万円多く資産を増やせます。
ポートフォリオに組み入れると分散投資になる
ハイイールド債をポートフォリオに組み入れて分散投資をすると、リスクを回避しながら資産を大きく増やせるケースがあります。ハイイールド債だけを集中投資するのは危険ですが、国債などの安全性が高い金融商品と組み合わせるとリスクを低く抑えられます。
また、同じハイイールド債であっても信用格付によって利回りとリスクが異なります。信用格付が高めと低めのハイイールド債で分散投資をすることによっても、投資のリスク低減につながります。
ハイイールド債のデメリットや”やばい”リスク
ハイイールド債は「やばい」と言われることがあります。ハイイールド債で資産運用をする際は、以下のようなデメリットがあることを知っておきましょう。
債務不履行リスクがある
ハイイールド債は債務不履行リスクがあります。ハイイールド債の発行体企業が債務不履行(デフォルト)を起こすと原則として一般債権扱いになり、投資額が戻ってこなくなる場合があります。
デフォルトの例として、日本航空(JAL)は 2010年1月に会社更生法適用を申請し、事実上の経営破綻に陥りました。その際に同社の社債がデフォルトになり、投資家には投資額の20%程度の資金しか戻ってきませんでした。
日本航空が事実上の経営破たんに 陥ったのに伴い償還期限に達していない同社の社債がデフォルト(債務 不履行)となった。政府支援を受ける企業の発行する社債がデフォルト になるのは過去に例がない。市場関係者からは、これからの社債の投資 には公共性の有無に関係なく企業の裸の財務力を自ら見極める力量が 問われるとの指摘が出ている。
このように、日本航空のような大企業でもデフォルトを起こすことがあるので、ハイイールド債での資産運用はリスクを伴います。
ハイイールド債に限らず、国債などの安全資産もデフォルトを起こすリスクはあり、あらゆる金融商品はリスクを伴うことを知っておきましょう。
さまざまな手数料がかかる
ハイイールド債で資産運用をする際は、さまざまな手数料がかかります。手数料が高額になることはハイイールド債のデメリットであり、利益が出ても手数料に圧迫されてしまい、実質利益は少なくなります。
ハイイールド債は債券の一種ですが、資産運用をする際は、投資信託で運用するケースがほとんどです。投資信託は購入時・運用時・解約時の3回にわたって手数料が発生するケースがあり、その場合保有しているだけでも手数料(信託報酬)が毎日発生します。
実際の手数料は銘柄や販売会社によって異なりますが、投資信託の手数料の目安は以下の通りです。
項目 | 手数料の目安 |
---|---|
売買信託手数料(購入時) | 0~3% |
信託報酬(運用時) | 0.5~3% |
信託財産留保額(解約時) | 0~0.3% |
売りたいときに買い手がつかない可能性がある
ハイイールド債は流動性リスクがあり、売りたいときに買い手がつかない場合があります。急に現金が必要になったときにすぐに換金できないことはデメリットであり、資金調達に支障をきたすことがあるので注意を要します。
また、買い手が見つからないということは、基本的に該当債券の価値が下がっているケースです。そのようなケースでは、買い手が見つかるまでハイイールド債の価格はどんどん低下して、損失が膨らんでしまうことがあります。
特に景気の後退局面では、発行体企業のデフォルトのリスクが高くなることで買い手がつかず、流動性が大きく低下します。
一方で、好景気が続いている時はデフォルトのリスクは低くなるため、流動性リスクも低減します。このようにハイイールド債を購入する際は、景気の動向を見極めることが大切になってきます。
さらに、他の債券についても詳しく知りたい方は、以下のリンク先のページをご覧ください。
仕組債 | 劣後債 | ハイイールド債 |
EB債 |
米国のハイイールド債の今後の見通し
米国のハイイールド債の今後の見通しは、相対的な利回りの高さは今後も継続すると予想されます。米国ハイイールド債指数の利回りは4.18%(2021年5月14日時点)であり、今後も4~5%程度の利回りが期待できます。
米国のハイイールド債は新型コロナウイルスのパンデミックにより、2020年3月に利回りが大きく低下しました。しかし、米国連邦政府の経済対策が功を奏し、利回りは2019年の水準にまで回復して堅調に推移しています。
2021年になるとワクチンが普及したことにより、企業のデフォルト率もピークアウトの兆しが見られます。経済活動が再開されるとデフォルト率が高かった娯楽や映画、空運などのセクターも反発し、ハイイールド債の利回りはさらに高くなる可能性があります。
まだまだ楽観はできませんが、ワクチンの普及や米国連邦政府の景気対策などを注視したうえで、米国のハイイールド債の購入を検討してみましょう。
ハイイールド債以外で資産運用がしたい方は?
ここまで見てきた通り、ハイイールド債はハイリスクハイリターンな投資商品です。一般的な社債とは異なり、S&P社やMoody’s社が低めに格付けした会社の債券を購入することで大きなリターンを狙えます。
一方で「ハイイールド債はリスクが高いと感じるため、ハイイールド債以外の投資で高いリターンを狙いたい」という投資家の方も多いでしょう。
そんな方は、ぜひヘッジファンドダイレクトにご相談ください。ヘッジファンドダイレクトでは、投資家のあらゆるニーズに合わせて絶対収益を狙う優良ヘッジファンドを紹介しているので、高い利回りで資産運用したいあなたの手助けになるでしょう。