利益をタックスヘイブンに移転
三番目は「ダッチ・アイリッシュ」「ダッチ・サンドイッチ」などの国際的な節税戦略である。アップルの本社は米国にあるが、書類上、事業収益は海外からのものとなっている。製造・組み立ては海外に外部委託しているが、経営陣をはじめ製品デザイナー、従業員、R&Dなどは米国内に存在するため、アップルの利益は米国のものとみるのが妥当であろう。米国の税法は、企業収益は製品を販売する場所ではなく、価値を生み出す場所であるとの概念に基づく。ところが、アップルは収益の約7割を合法的に税率の低い海外に振り向けている。
販売や特許料のロイヤリティを海外子会社に移転することで米国や他国への納税額を抑えることができる。ルクセンブルグ支社の場合、取引決済をルクセンブルグ経由にすることで低い税率の恩恵を受けている。アップルは税率の高い国のディストリビューターを「コミッショネア」(在庫を持たないため課税されない)と呼び、税率の低い国の子会社の代理人として販売業務をさせることで、税務コストを削減した。
「ダブルアイリッシュ」とは、企業の利益をタックスヘイブンに移転する仕組みである。アイルランド政府は雇用確保と引き換えにアップルに対して減税措置を約束した。NYタイムズによると、カリフォルニアで開発した特許をアイルランドに移転したことで、法人税率をカリフォルニアの35%からアイルランドの12.5%に大幅に抑えることができた。さらに、源泉税がゼロのオランダを経由させることで課税を逃れる「ダッチ・サンドイッチ」というテクニックも駆使している。アイルランドにもう一つ子会社を設立し、利益をアイルランドの子会社とオランダを経由させて、税当局の監視の目をくぐり抜けることができた。