「日本にこんなワインがあったのか」~鳥居平物語(最終回)

「皇室の結婚式に出したかった」ほどの美味

 観光業界で2012年最大の目玉は世界1の電波塔スカイツリーである。世界の観光客が訪れるこの地で、記念のワインを売ることになった。

 日本で自信をもって勧められるワインとして指名されたのも「鳥居平」だった。一流レストランのソムリエたちが目隠し審査をして決めたのだという。

 一流レストランのソムリエだけではない。帝国ホテルの第13代総料理長の田中は、あまりの美味しさに「皇室の結婚式に出したかった」と絶賛した。このように「鳥居平」は今、各方面で極めて高く評価されている。

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 約1300年前の奈良時代・養老2(718)年、僧・行基が諸国行脚で甲斐の国を訪れたとき、勝沼の柏尾にさしかかり、日川の渓谷の大石の上で修行したところ、満願の日、夢の中に、手にぶどうを持った薬師如来が現れた。

 行基はその夢を喜び、早速夢の中に現れた姿と同じ薬師如来像を刻んで安置したのが、今日の柏尾山大善寺(通称・ぶどう寺)だという。以来、行基は薬園をつくって民衆を救い、法薬のぶどうの作り方を村人に教えたので、この地にぶどうが栽培されるようになり、これが甲州ぶどうの始まりだと伝えられている(大善寺ホームページより)。

 つまり、鳥居平のある柏尾山はぶどうの聖地といえる。その聖地で、今年もワイン用ぶどうが丹精込めて栽培され、トンネルカーブでは珠玉のワインが静かに眠りについている。(文中敬称略)
(第5回)「今村、こだわりのワイン造り」

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