アニソンなしで生きられない
F社長は、一般の若社長と比べ比較的書き込みの頻度が少ない。社員旅行の写真、社員の結婚式の写真、自らの講演会の写真などが、コメントなしに掲載されている。ときどき、サイトでひろったIT関係の注目記事などがシェアされている。古い記事を見ると、
「○○○○が、×××のIT融合プロジェクトの基盤技術に採択されましたー! リアルタイムでの処理能力をさらに発展させていきますウホホー」などとある。
ところがある日、こんな記事がアップされた。書き出しはこうだ。「もうどうしていいかわかりません。あたまがヘンになりそうです」。え? なんだなんだ。どうしたんだ、ストレスか?経営の危機か? と思いきや、記事はこう続いていた。
「チケットがまったく手に入りません! もうどうしていいかわからない」
水樹奈々さん(公式サイトより)
実は取材時、アニソンが趣味とは聞いていた。F社長が言うには、以前趣味だったもの(ゲームをはじめとするプログラミングを含めたパソコンいじり)が仕事になってしまって、起業してからの数年は仕事のストレスのはけ口がなくて困り、事業が軌道に乗ってからの数年はゆとりがあるのに楽しめるものがなくて困った、と。
おおむね、今の若い社長たちは、事業が成功したといっても、銀座のクラブに行くわけでもなし、ゴルフクラブの会員になるわけでもない。どうも、見栄や付き合いとは無縁のようなのである。F社長がようやく趣味として見出したのがアニソンだったというのだ。
そういえば、「はまってしまって多い時には週3回ライブに出かける」と言っていたっけ。それを聞いたわたしは、彼と会って話した印象とはすぐに結びつかないなと思ったのを覚えている。しかし――。彼がハンパないマニアであることを、フェイスブックの記事で思い知らされたのである。